Gemmy 132 号 「平成18年宝石学会(日本)のご報告」

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Gemmy 132 号 「平成18年宝石学会(日本)のご報告」

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会場・神戸芸術工科大学

平成18年度の宝石学会(日本)の講演会および見学会が7月22日(土)・23日(日)に開催されました。今年度はIMA(International Mineralogical Association、国際鉱物学連合)の総会が神戸で開かれること等に合わせ、例年よりひと月程時期を繰り下げ、神戸芸術工科大学での開催となりました。
講演会は、東京以外での開催にも拘らず80名もの参加者が集い、特別講演2件、一般講演17件を熱心に聴講する姿が見られました。
一般講演は発表・質疑応答を含めて20分の持ち時間、特別講演は40分の発表時間で、プログラム通り、ほぼ滞り無く進行致しました。

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江森所員

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藤田所員

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藤田所員奨励賞

当中央宝石研究所からも2件の登録があり、江森所員が「Be拡散加熱処理を施されたブルー・サファイアの鑑別について」という演題で、藤田所員が「コパルの加熱実験による諸データの変化について」という演題で、研究成果の発表を行ないました。発表内容については本誌上で順次掲載していく予定です。(講演プログラムは前号参照)
また、藤田所員はコハクなどについての研究成果・発表内容が評価され、宝石学会奨励賞を受賞致しました。
奨励賞とは、継続的に発表を行ない学会に貢献した若手研究者に授与される賞で、今回は全国宝石学協会のアヒマディ氏と藤田所員の二人が受賞対象となり表彰されました。


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シグリー博士

特別講演1はGIAリサーチ部門の責任者であるシグリー博士(Dr. James E. Shigley)が、「天然、処理および合成宝石ダイヤモンドの鑑別」という演題で講演を行いました。照射やHPHTの処理方法について、高温高圧法および最新の化学的気相法(CVD)による合成方法について、さらには複数の処理がなされた(例えば照射処理に加えてHPHT処理がなされた等)ダイヤモンドの鑑別法についてなど、GIAの研究成果が発表されました。

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小倉教授

特別講演2は、会場となった神戸芸術工科大学の小倉繁太郎教授が「構造色から見た透明体内部の分光測色」という演題で講演しました。透明な宝石(特にオパール)内部の局所的分光測定と従来の表面で得られた構造色との比較等についての専門的な内容の講義でした。構造色とは、顔料・染料による色ではなく、回折・干渉・散乱による特異な色が現れる現象を指します。小倉先生のご専門は応用物理の光学薄膜・構造色です。

一日目の講演会終了後は、学内の厚生館に場所を移し懇親会が行なわれました。和やかな雰囲気の中、参加者同士で交流を深めたり、質疑応答時に質問できなかったことを熱心に聞かれる方もいらっしゃいました。



二日目は、42名の参加者が鳴門のうず潮と淡路島洲本にある真珠製核工場を見学致しました。うず潮の見学はちょうど大潮の時間帯に観潮船に乗れたため、船上で波しぶきをあびる方までいて、自然の雄大さに触れることができました。真珠製核工場では、工場の方から丁寧な説明があり、核の製造工程をつぶさに見学することができました。核に使用されるミシシッピ産カワボタンガイ(ウォッシュボード)等についても知見を深めることができ、大変有意義な見学会となりました。

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渦潮

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ウォッシュボード

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製核工場・貝切断