Gemmy 153 号 「小売店様向け宝石の知識「金価格・Gold Price1」」

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Gemmy 153 号 「小売店様向け宝石の知識「金価格・Gold Price1」」

金価格・Gold Price1

金の用途は宝飾品51%、工業用12%、投資用17%、公的投資18%〈2008年推計〉。宝飾品の材料としての金の市場価格が乱高下すると、宝飾業者のリスクは大きい。昨年秋いらい金価格は乱高下しながら上昇している。金高騰は経済不安を映すバロメーターといわれる。

☆金価格が上昇する要因は、
[1]ドル安と米国の財政不安
[2]投資需要の増加
[3]中国など新興国中央銀行の買い
[4]金融不安
[5]軍事的緊張やテロなどのリスク
などがある。

金やプラチナの市場価格は、30年前まではロンドン現物価格で世界市場価格が決っていた。その後は米国NY市場が世界の指標価格となっている。

1980年初頭にNY金価格はドル/トロイオンスが600ドルになり、日本国内では円/グラムが6700円に高騰したことがある。この時はソ連がアフガンに侵攻し世界情勢の不安が増したときである。その後金価格は暴落しNY金価格は300ドル/トロイオンスまで下落した。世界景気がもちなおしたためだ。日本国内の景気も盛り返し、国内金価格は、00年11月には979円/グラムまで下落した。

★金価格が下落する要因は、
[1]世界景気回復と中央銀行の利上げ
[2]とくに米国景気の好転
[3]ドル高
[4]金を購入するより株やそのほか有利な投資
[5]ヘッジファンドなどの大量売却
などがある。

金地金の国内価格は、ひところの1000円/グラムから今や3倍の3000円/グラムを超えている。ドルベースでは300ドル/トロイオンスが4倍の1200ドル/トロイオンスに高騰している。ドル安の中で金に投資する傾向が強まり、さらに株安で株と連動の薄い金に注目され、世界的に金・ゴールド買いに向かっている。

しかし近年、金・ゴールド及びプラチナを含めて商品相場は乱高下しており注意が必要だ。

株価が低迷している今、株式市場と連動性が薄い金投資に注目する人が多い。

われわれ宝飾業界は、原材料の金の価格が上昇すると宝飾品価格が連動して値上がりし、宝飾品需要の減少をまねく。

いま市場では金を宝飾品から回収するリサイクル・ビジネスが増加し、過去にない現象が起こっている。宝飾品メーカーにとって、ゴールドジュエリーは材料としての金価格が大きく変動するのは大きな経営課題だ。金価格が値上がりしているときは値上がり差益が得られるが、値下がりすると在庫評価損が発生し、経営に大きな影響を及ぼす。プラチナもつい最近まで高騰したが、その後急落した。そのため国内の宝飾業者は大きな痛手を蒙った。金もいまは高騰しているが将来何時に急落するか知れない。

宝飾品ゴールドジュエリーは、元来あくまで製品の細工、出来栄え、デザイン、感性、流行などが重要で、材料としての金価格に主体するものではない。

宝飾業者はゴールドジュエリーの過剰在庫を避け、常時、適正在庫の維持に心掛けるべきである。金やプラチナの投機的購入は厳に慎むべきだろう。

NYの金価格は、ドル/トロイオンス価格で決まる。したがって、日本国内価格は、円/グラムに換算される。為替相場が影響する。なお、トロイオンスは31.103g。国際地金取引単位。中世に繁栄した都市トロイに由来する。金は実物で無価値にならない利点があり、一方で金利・配当がつかない。したがって通貨が金利を上げると金のメリットは低下する。1グラムでも1トンでも単価は同じなので宝飾品大量生産のメリットは大きくない。

「楽しいジュエリーセールス」 著者:早川 武俊
早川宝石研究所ホームページ