CGL通信 vol38 「Seoul Jewelry Industry Support Centerを訪問して」

CGL通信


CGL通信 vol38 「Seoul Jewelry Industry Support Centerを訪問して」

リサーチ室 北脇  裕士

去る 2017年2月1日(水)~3日(金)に韓国ソウル市のSeoul Jewelry Industry Support Center(SJC)を訪問し、最近の合成ダイヤモンドの現状と鑑別技術の話題を中心に情報交換を行いました。以下に概要をご報告致します。

 

ソウル市のシンボルともいえるソウルタワーの夜景
ソウル市のシンボルともいえるソウルタワーの夜景

 

Seoul Jewelry Industry Support Center(SJC)とは

Seoul Jewelry Industry Support Center(SJC)は2015年6月に開設されたソウル市のジュエリー産業を育成するための総合支援施設です。(https://www.seouljewelry.or.kr/eng/main/main.do)
SJCはソウル市のほぼ中心に位置するチョンノ3街(鍾路3丁目)にあります。この地は韓国ジュエリー産業のメッカであり、製造から販売までのジュエリー関連製品に関わる企業が集積しています。また、周辺には世界文化遺産に登録されている故宮(景福宮、昌徳宮)や宗廟(王と王妃の位牌を祀った儒教の祀堂)、韓国の伝統的家屋である韓屋(ハノク)の密集する地区である北村韓国村があり、朝鮮時代から近代までの歴史的な趣のある文化的地域です。SJCはまさに宗廟の外壁に面した閑静な場所に立てられています。

 

Seoul Jewelry Industry Support Center周辺 の地図
Seoul Jewelry Industry Support Center周辺 の地図

 

宿泊したホテルからのソウル市の眺望。遠くにソウルタワーが見える
宿泊したホテルからのソウル市の眺望。遠くにソウルタワーが見える

 

世界文化遺産に指定されている昌徳宮の入り口。チマチョゴリを纏った観光客
世界文化遺産に指定されている昌徳宮の入り口。チマチョゴリを纏った観光客

 

すでにオープンしているSJCの第1館は、リサーチ部門を担当するSJC研究所、事務局、ジュエリーライブラリーが併設しています。そして、およそ50m南に今年の6月28日に開館予定の第2館が現在建設中です。第2館では共同作業空間、体験館、カフェテリアおよび展示場として活用される予定です。
SJCはソウル市から経営を委託された財団法人ソウルジュエリー産業振興財団が運営しています。ソウル市で毎年ジュエリー産業に関わる予算が計上され、財団による実質上のサポートが行われています。

 

Seoul Jewelry Industry Support Centerの職員の皆さんとセンターの玄関にて
Seoul Jewelry Industry Support Centerの職員の皆さんとセンターの玄関にて

 

SJC第1館の1階には事務局があります。事務局では新進企業の支援、ジュエリーフェアや工藝技術大会の主催、ウェブドラマの制作やジュエリー関連の観光コースの開発などを行っています。また、加工、教育、鑑別などの技能者を登録してデータベース化し、各企業との人材マッチングなどの支援も行っています。
2階はジュエリー関連の雑誌や書籍および研究論文が収められており、一般の方々が自由に閲覧できるようになっています。

 

Seoul Jewelry Industry Support Centerの2階では一般の方々がジュエリー関連の書籍を閲覧できる
Seoul Jewelry Industry Support Centerの2階では一般の方々がジュエリー関連の書籍を閲覧できる

そして、地階にはSJC研究所があります。ここには宝石鑑別に使用される先端的な分析機器がそろえられており、各種分析サポートが行われています。特に微量成分の分析に使用されるLA–LIBSはApplied Spectra製の最新鋭の機種でICP–MSとも組み合わされています。これらはコランダムのBe処理の看破や金合金の定量などに有効利用されており、その成果は2016年6月の宝石学会(日本)でも発表されています。
SJC研究所での依頼分析は無償で受け付けられていますが、鑑別書は発行されずに分析結果の提供のみを行っています。したがって、依頼者はエンドユーザーではなく、鑑別機関や卸売業者が多いようです。その他に産業モニタリング(貴金属の含有率やダイヤモンド・グレーディングの現状把握)、各種情報セミナーの開催、海外からの専門家の招聘および技術交流などの業務を担当しています。また、後述するダイヤモンドの団体認定制度の実務的なサポートも行っています。

 

SJC研究所に設置されているICP–MS(左)とLA–LIBS(右)
SJC研究所に設置されているICP–MS(左)とLA–LIBS(右)

 

現在建設中のSJC第2館。韓国の伝統的な木造建築のデザイン。
現在建設中のSJC第2館。韓国の伝統的な木造建築のデザイン。

 

SJC研究所のダイヤモンド鑑別機器

韓国のジュエリー業界においてもこの1–2年メレサイズの合成ダイヤモンドの流入が深刻となり、その対応が急務となっていました。SJC研究所ではWolgok Jewelry Foundation※( http://w-jewel.or.kr/index.php)からDTC製のDiamondSure™、DiamondPlus™、DiamondView™、PhosView™、そしてGLIS–3000などのダイヤモンドの判別機器の寄贈を受け、合成ダイヤモンドの鑑別体制を整えてきました。さらに、GIAからDiamond–Check、アントワープのAWDC(Antwerp World Diamond  Center)からメレダイヤモンドの自動選別機M–Screen Plusの貸与を受けており、CGLからもCGL–Diamond Kensa を2台提供させていただいております。
これらの分析器機のすべての設置は2017年の1月に終了し、2月からはダイヤモンドの分析依頼を始めています。依頼を受けたルースのメレダイヤモンドのパーセルのうち、最大で60%が合成であったこともあるそうで、SJC研究所におけるダイヤモンドの分析サポートは韓国のジュエリー産業に大いに貢献していると思われます。

 

DTC製のダイヤモンド判別機器。左から PhosViewTM、 DiamondPlusTM、DiamondSureTM、DiamondViewTM
DTC製のダイヤモンド判別機器。左から PhosViewTM、
DiamondPlusTM、DiamondSureTM、DiamondViewTM

 

AWDCから寄贈されたM–Screen Plus
AWDCから寄贈されたM–Screen Plus

 

FTIRの機能でダイヤモンドのタイプを粗選別するGIAのDiamond–Check
FTIRの機能でダイヤモンドのタイプを粗選別するGIAのDiamond–Check

 

燐光で無色の合成ダイヤモンドを選別するGLIS–3000
燐光で無色の合成ダイヤモンドを選別するGLIS–3000

 

※Wolgok Jewelry Foundationは、株式会社LeeGoldの創業者として50年以上韓国のジュエリー産業に従事してきたイジェホLee Jae Ho氏が200億ウォンの私財を投じて2009年に設立した公益法人。韓国のジュエリー産業の健全な発展に寄与すべく、傘下にWolgok Jewelry Research Centerを有し、定期的に業況調査を行っている。

 

ダイヤモンド団体認定制度

韓国では消費者からの信頼を得るための正しいダイヤモンド・グレーディング文化の構築に向けての活動が長年にわたって行われてきており、その一環として2016年11月より「ダイヤモンド団体認定制度」が発足しています。この制度は“研磨されたダイヤモンドの鑑定”に関する韓国標準規格(KS D 2371)を基にしており、ダイヤモンド・グレーディングすべての平準化を目指しています。その最初の試みとして、日本と同様にマスターストーンを統一してのカラー・グレードの平準化が進められています。この制度の主宰は社団法人韓国貴金属宝石団体長協議会です。同協議会は材料、貴金属、研磨、加工、製造、鑑別、デザインなどの韓国のジュエリー産業に関わる10以上の団体から構成されています。カラーグレーディングのマスターストーンの選定を含む認定制度の実務は同協議会の傘下としてダイヤモンド鑑定団体認定委員会が組織され運営されています。このダイヤモンド団体認定制度の適正な管理・運営の活動の一環として2016年9月に社団法人韓国貴金属宝石団体長協議会会長Kim Jong–Mok氏、ダイヤモンド鑑定団体認定委員会委員長Cho Ki–Sun氏、Wolgok Jewelry Research Center所長Ohn Hyun–Sung氏、Seoul Jewelry Industry Support CenterのLee Bo–Hyun氏の4名がAGLを表敬訪問され、一足早く実施されてきた日本のマスターストーン制度について視察されています。
韓国のダイヤモンド・マスターストーンはGIA基準の12石(E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、S、Z)がそろえられており、その原器はSJCに保管されています。現在、この団体認定制度に加盟している鑑別機関は5社あり、加盟機関のグレーディング・レポートはデザインが統一されています。そのため書面を見ればすぐに認定制度によるレポートであることがわかります。この認定制度を推奨している販売業者はすでに10社以上あり、韓国のジュエリー産業で根ざしていくことが期待されています。◆