Gemmy 139 号 「小売店様向け宝石の知識「アンティークジュエリー7」」

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Gemmy 139 号 「小売店様向け宝石の知識「アンティークジュエリー7」」

アンティークジュエリー・Antique Jewellery 7

アンティークジュエリー。
100年、200年、それ以上の年月を経て、今なお鑑賞する人々を魅了し、感動を与え、製作者の美の心とワザの素晴らしさを偲ばせるジュエリー作品。
当時の貴婦人たちが愛し着用したジュエリーが、いま現在のわたくしたちの身近な暮らしに夢を与えてくれます。
子育てをようやく完了し「ほっと」する頃、ちょっと贅沢なハイクラスな生活、欧米の国際水準の生活文化を身近にするために、アンティークジュエリーは、現在のわれわれ日本人に豊かな人生への希望を持たせてくれます。
アンティークジュエリーは、一つひとつ、当時の職人の丁寧な手仕事で作られ、今日では失われた独特な精緻な技術が集約されています。
今日の自動工作機械で大量生産される、心の通わない画一的なデザインのモダーン・ジュエリーとは明らかにひと味もふた味も違います。
ジュエリーは、人類の創世記から存在し、古代から現代までえんえんと続いていて、昔は一つの大きな文化を構成していました。宝石や貴金属を持つことは一部の王族・貴族に限られ、それを加工できる職人も限られていました。王族、貴族、マハラジャが手にしたダイヤモンド、カラー・ストーンが、ヨーロッパを中心とした美の文化の洗礼を受けて、花開いたのがアンティークジュエリーでした。
今も残るその絢爛たるアンティークジュエリーは、芸術品であり、わたくしたち現代の人々への過去からの尊い遺産でもあります。

ところで、わたくしたちの身近なアンティークジュエリーの歴史が始まったのは、18世紀後半、英国のジョージアンの時代からといわれています。その後、ジュエリーの黄金時代とも云われる華やかなヴィクトリアン、端正なエドワーディアン、曲線の美しいアール・ヌーヴォー、直線的なアール・デコへと流行と様式は移り変わってきました。
アンティークジュエリーの価値は、宝石の大きさや貴金属素材の希少性だけではありません。細工の精緻さやデザインのよさで決まります。現代の価値観で測ることは不可能でしょう。
少しラグジュアリーな古き良き時代の宝石・貴金属ジュエリーを身近に経験すること、これも現代のわたくしたちの人生を楽しむ一方法であります。
アンティークジュエリー、本当に優れたものを、時代を超えて、あなたの身近にしてはいかがでしょう。
近年アンティークの世界では、ジュエリーばかりでなく、陶磁器、絵画、家具、衣裳なども同時にたしなむ風潮があり、この種類のショップが増えています。レプリカやリプロのものも含めてブームとなっています。ホテルや一流レストランだけでなく、一般家庭でも、おしゃれな洋風なおもてなしをするようになり、アンティーク調のジュエリーや衣裳、テーブル・ウエアが流行しています。

ここでアンティークジュエリーの歴史で、最先端のジュエリーを身に着飾った貴婦人たち、その時代の宝飾・服飾の最先端を飾った代表的な貴婦人たちを挙げてみよう。
彼女たちのいまに残る肖像画と遺品で当時流行のジュエリーを垣間見ることができる。
いまも歴史書や、映画・テレビのドラマで話題になるアンティークを飾る貴婦人たちです。

マリア・テレジア(1717~1780)
 オーストリアの母として国民に慕われたマリー・アントワネットの母
ポンパドール侯爵夫人(1721~1764)
 美貌と才知あふれたルイXV世の妾妃
エカテリーナII世(1729~1796)
 世界に誇る絵画やアンティークを愛したロシアの女王
マリー・アントワネット(1755~1793)
 フランス革命に散った薄幸の王妃 首飾り事件は有名
ヴィクトリア女王(1819~1901)
 アンティーク史上燦然たるヴィクトリア時代を築いた才覚あふれる女王(前号を参照)
ユージェニー皇后(1826~1920)
 ヨーロッパの社交界に名を成したナポレオンIII世の妃

彼女らを通して、アンティークジュエリーの歴史を垣間見ることができます。

「楽しいジュエリーセールス」
著者 早川 武俊