Gemmy 142 号 「ラボトピックス「ウサンバラ効果 [THE USAMBARA EFFECT]」」

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Gemmy 142 号 「ラボトピックス「ウサンバラ効果 [THE USAMBARA EFFECT]」」

ウサンバラ効果 [THE USAMBARA EFFECT]

前号の記事“USA会議レポート”の中で紹介したウサンバラ効果トルマリンについてこれらの石を扱っているフランスのDenis GRAVIER氏から簡単なこの効果に関する説明文が送られてきましたので筆者の説明も少し加えてご紹介します。

タンザニアのウサンバラ山地(Usambara Mountains)で採掘されるトルマリンには非常に興味深い光学効果を示すものがあることが、HalvorsenとJensen(1997年)によって紹介され、ウサンバラ効果と命名されました。

ウサンバラ効果は光の透過経路長の違いによる色の変化です。緑色のウサンバラ効果トルマリンの上に同種の石が置かれると、緑色のウサンバラ効果トルマリンは透過した光が赤色に変ります。これは光線が石を通過する際にある波長を吸収し、残りの波長が石に色を与えた結果です。

透過する光線の経路長の変化はスペクトルの強度分布に影響を与えます。経路長が伸びると一般的には吸収が増しますが、ウサンバラ効果は吸収の増加が高波長側より低波長側でより大きくなる石等に現われます。経路長が増加すると、赤色の透過強度は緑色の透過強度と比較して大きくなるため、緑色と赤色の透過率間のバランスは赤色側に向かって増加し、その結果、色の変化として感じられます(グラフ1)。人間の目の感度は緑色部で最も高く(500から510nm;グラフ2)、石を通過した光が緑色と赤色でほぼ同じ透過率を持っているなら、その石は緑色に見えます。二枚のウサンバラ効果の石を重ね合わせて、赤色の透過率が僅かにしか変化しないものは緑色のままに見えるでしょう。しかし、赤色の透過率が明らかに緑色の透過率より高くなったものは突然赤色に変ったように見えます(写真1・2)。

グラフ1

グラフ1

グラフ2

グラフ2 Sketches Kurt Nassau

写真1-2


 

写真3

写真3

これは複屈折性の石(大抵の宝石がこれにあたる)に光が入射した際、光は石の中で二つに分かれ別々の経路で光が通過するために二つの異なった色を示す二色性による色の見え方の違いではありません。その証拠に次の写真4・5のとおり左の薄片に見られる二色性は黄色と緑色ですが、この薄片をより厚くした時にウサンバラ効果によって二色性の色の違いは隠され、どちらも帯橙赤色に見えます。
原石の薄片に光を通した時に横方向に見られる赤色もウサンバラ効果です。

 

写真4

写真4

写真5

写真5


 

ウサンバラ効果は最低三つの要因の組合せで生まれています。

(1)吸収スペクトルの分布状態
このトルマリンの薄片が薄ければスペクトルの橙色から黄色と青色から緑色にかけて吸収があり、赤色と緑色の光が透過する。
(2)人間の眼の視感度が赤色よりも緑色で高い
赤色・緑色・青色の中で人間の眼は緑色の感度が最も高く、赤色と緑色の透過率に差がない場合には緑色に見える。
(3)より厚い薄片では赤色の吸収よりも緑色の吸収が大きい
薄片が薄い時のスペクトルのバランスと比べ、薄片がより厚くなると緑色の吸収が赤色よりも大きくなる。