CGL通信 vol47 「日本鉱物科学会 2018 年年会・総会参加報告」

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CGL通信 vol47 「日本鉱物科学会 2018 年年会・総会参加報告」

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リサーチ室  江森 健太郎

去る 9月19日(水)から21日(金)までの3日間、山形大学小白川キャンパスにて日本鉱物科学会2018年年会・総会が行われました。弊社から2名の技術者が参加し、それぞれ発表を行いました。 以下に年会の概要を報告致します。

山形県を代表する戦国武将、最上義光
山形県を代表する戦国武将、最上義光

 

日本鉱物科学会とは

 

日本鉱物科学会(Japan Association of Mineralogical Science)は平成19年9月に日本鉱物学会と日本岩石鉱物鉱床学会の2つの学会が統合・合併され発足し、現在は大学の研究者を中心におよそ900名の会員数を擁しています。日本鉱物科学会は鉱物科学およびこれに関する諸分野の学問の進歩と普及をはかることを目的としており、「出版物の発行(和文誌、英文誌、その他)」、「総会、講演会、 研究部会、その他学術に関する集会および行事の開催」「研究の奨励および業績の表彰」等を主な事業として活動しています。2016年10月に、一般社団法人日本鉱物科学会として新たな出発の運びと なり、(1) 社会的及び学術界における信頼性の向上、(2) 責任明確化による法的安定、(3) 学会による財産の保有等が確保され、コンプライアンスの高い団体として活動していくことになりました。2018年会・総会は、一般社団法人として前年2017年の愛媛大学での開催に続き2回目の年会・総会になります。

 

山形大学について

 

山形大学は明治11年(1878年)の山形県師範学校の開校にはじまり、昭和24年(1949年)に 山形高等学校、山形師範学校、山形青年師範学校、米沢工業専門学校、山形県立農林専門学校の5つの教育機関を母体に新制国立大学として設置されました。「地域に根差し、世界を目指す」をスローガンとしており、「自然と人間の共生」をテーマに掲げ、「学生教育を中心とする大学創り」「豊かな人間性と高い専門性の育成」「『知』の創造」「地域及び国際社会との連携」「不断の自己改革」の5つの使命を掲げています。教養教育を学士課程教育の基盤である「基盤教育」として重視しており、その運営・実施期間として「基盤教育院」が設置されています。学生支援では、学生と大学の関係を密接にすることを狙いとし、大学が直接学生をスタッフとして雇用するインターンシップ制度が創設される見込みだそうです。平成31年(2019年)には創立70周年を迎える歴史と伝統を受け継いでおり、優れた人材を社会に送り出しています。

日本鉱物科学会2018年年会・総会が行われた小白川キャンパスの他、米沢、鶴岡キャンパスがあり、 山形県全体としてみると、村山地方(山形市)、置賜地方(米沢市)、庄内地方(鶴岡市)それぞれに所在し、近年、最上地方に「エリアキャンパスもがみ」が設置され、県内4つの地区すべてにキャンパスが配置されています。

会場となった山形大学
会場となった山形大学

 

小白川キャンパスは JR 山形駅から巡回バスで10分程度、徒歩でも30分程度の距離となっており、 駅前からのアクセスは非常に良好です。
今年の年会では、3件の受賞講演、10件のセッションで114件の口頭発表、83件のポスター発表が行われました。

1日目、19日(水)の9時15分より小白川キャンパス基盤教育1号館で「結晶構造」、「地球表層」、「宇宙物質」、「深成岩・火山岩・サブダクションファクトリー」、「火成作用の物質科学」 の5つのセッションが行われました。
また、3日間ポスター発表が開催されており、12時〜14時がコアタイム(ポスター発表者がポスター の横に立ち、質疑応答を行う)として設定されていました。

総会の様子
総会の様子

 

2日目、20日(木)は、9時より基盤教育2号館で総会が行われました。総会は上にも記した通り、 一般社団法人化して2回目の総会となりました。総会は当日出席92名、委任状107名と定足数を満たしました。総会では、各種事業報告の他、役員承認や会員会費規定の改定等の決議事項、授賞式が行われました。総会の後、受賞講演が行われ、平成29年度第18回受賞者である金沢大学 海野進教授、 同第19回受賞者である学習院大学 糀谷浩氏、平成29年度第23回日本鉱物科学会研究奨励賞表彰の東京大学 新名良介氏による講演がありました。同日午後14時からは基盤教育1号館にて「岩水–水」、「岩石・鉱物・鉱床」のセッションが行われました(この2セッションは資源地質学会との共催セッションでした)。

 

受賞講演を行った 3 名(左から新名良介氏、海野進教授、糀谷浩氏)と 日本鉱物科学会会長土`山明教授
受賞講演を行った3名(左から新名良介氏、海野進教授、糀谷浩氏)と 日本鉱物科学会会長 土`山明教授

 

3日目、21日(金)は基盤教育1号館にて「鉱物記載」「変成岩」「高圧深部」のセッションが行われ、「鉱物記載」セッションで弊社研究者2名が「周囲圧力下で熱処理(LPHT処理)された褐ピンク色CVD合成ダイヤモンドの分光特性」「マダガスカル、ディエゴ産ブルーサファイア中に観察されるBe含有ナノインクルージョン」の発表を行いました。講演後、多数の質問が寄せられ、鉱物科学会会員の方々の宝石学への興味の強さを感じることができました。(なお、発表内容についてはCGL通信43号、45号に掲載されています。http://www.cgl.co.jp/latest_jewel/tsushin/)

 

「鉱物記載」セッションで講演を行う筆者
「鉱物記載」セッションで講演を行う筆者

 

今回行われた発表の中で、宝石と関係の深い話で興味深いものが2点ありましたので紹介します。

 

「人工知能による深層学習を利用したヒスイ判別機の開発」

小河原孝彦(フォッサマグナミュージアム)

新潟県糸魚川市フォッサマグナミュージアムでは、開館当初から市民に広く開かれた博物館をめざし、海岸等で採取した石の名前の鑑定を窓口で学芸員が行っている。鑑定件数は年々増加し、この件数増加に博物館側は対応に苦慮している。発表者は、人工知能を用いた石の鑑別(ヒスイか否か)の可能性について研究を行った。本研究では画像の深層学習に2015年にGoogleが開発した機械学習ソフトウェアライブラリであるTensor Flowを利用し、画像分類と物体検出に適応したアーキテクチャのNASNetを転移学習に用いた。糸魚川の海岸で採取した礫の写真13,000枚を教師画像とし、ヒスイお よびヒスイ以外の2種類に分類し、NASNetに転移学習させた。結果として、20,000回の学習でヒスイとヒスイ以外の認識率は約96%になった。本研究から、人工知能を用いた画像の深層学習でヒスイの認識が可能であることが明らかになった。

 

「肥後および西彼杵変成岩中より見出されたダイヤモンド様物質の鉱物学的特徴」

大藤弘明、福庭功祐(愛媛大・GRC)、西山忠男(熊本大・先端科学)

日本の九州地方に分布する肥後変成岩および西彼杵変成岩中からもダイヤモンドと考えられる炭素物質が発見され、注目を浴びている。筆者らはこのようなダイヤモンド様物質の直接観察をめざし、コンタミの可能性などに注意を払いながら観察試料を作成し、電子顕微鏡観察を行った。ダイヤモンド様物質を含む肥後変成岩(クロミタイト)柱のダイヤモンド様物質は、クロマイト中に含まれる負結晶中に1μmほどの紡錘形粒子として観察され、ランダムに集合した径数十〜数百nmの極めて細粒なグラファ イトから成ることが分かった。西彼杵変成岩(泥質片岩)中のものは、基質を構成するフェンジャイトの空隙部に径0.4〜1μmほどの不定形から半自形(八面体様)の粒子として濃集しており、TEM下で電子線回折によって調べたところ、確かにダイヤモンドであるがコンタミの可能性も否定できず、今後の課題であると発表された。

 

毎年開催される日本鉱物科学会年会では、最先端の鉱物学研究が発表され、弊社も毎年2件研究発表を行っています。鉱物学と宝石学は密接な関係があり、参加、聴講することで最先端の鉱物学に関する知識を得られ、普段接する機会が少ない研究者の方々と交流を深めることができます。来年も鉱物科学会年会に参加し、中央宝石研究所で行われている各種宝石についての最先端の研究を発表、深めていく予定です。なお、来年の日本鉱物科学会年会は9月20日〜22日、九州大学で開催されます。◆

ポ ス タ ー セ ッ ション コ ア タ イ ム の 様 子
ポスターセッション コアタイムの様子