Gemmy 152 号 「小売店様向け宝石の知識「光り輝く宝石の島・スリランカ2」」

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Gemmy 152 号 「小売店様向け宝石の知識「光り輝く宝石の島・スリランカ2」」

光り輝く宝石の島・スリランカ2

スリランカの宝石産地ラトナプラは古来世界に知れわたっていた。紀元前10世紀、ソロモン王はシバの女王にスリランカ産のルビーを贈って心を射止めたといわれる。「アラビアンナイトの物語」では船乗りシンドバットがラトナプラを訪ねたという話が出てくる。セイロン(マルコポーロ東方見聞録ではセイラン島とある)ラトナプラの宝石はどんなにすばらしく貴重であるか、この旅行記に記されている。ラトナプラの町はスリランカの近代国際都市コロンボから南東約110kmに位置し、バスで所要3時間の所にある。

ラトナプラ付近一帯はカラーストーン産出地として世界的に有名である。ラトナプラは現地の言葉(シンハリ語)で宝石の町を意味する。ラトナは宝石、プラは都の意味。この地区の農耕地は平地で、この地下にイラム層(スリランカで漂砂鉱床の一種である宝石含有の砂利層に対する現地名)があり、多くが立穴掘り方式(漂砂鉱床や鉱脈が地表近くに広がっているとき、その鉱層に垂直な井戸式の立穴を掘り下げて、そこより横に掘進していく採掘法)で採掘される。また、付近の川から川底を直接さらうことにより宝石が採取される(現地ではマニンガという)。

ラトナプラで産出する主な宝石は次の通り
・コランダム(ルビー、サファイア)
・クリソベリル(高品質キャッツアイ、アレキサンドライト)
・ジルコン、スピネル、ムーンストーン、トパーズ、トルマリン、ペリドット
・ガーネット各種、クォーツ各種
そのほか多くの宝石を産出する。

スリランカでは、宝石はさまざまな意味を持っていたようだ。王や王族の権力の象徴として、また宝石の光り輝きは悪をしりぞけると信じられていた。さらに光り輝く宝石を身に着けると不老不死の生命が手に入ると。このようにスリランカの宝石は絶好のお守りとして人々に愛好されてきた。世界遺産シギリヤ・ロックの有名な壁画に描かれた王女シギリヤ・レディたちも大きな美しい宝石を身につけ守護石としている。

ラトナプラは、光り輝く宝石の島スリランカのなかで代表的な宝石産地。この町に入ると、いたる所に簡単な小屋がけした採掘現場が散見できる。そこで採掘している人たちは、貴重な宝石を発見するため一攫千金の夢と欲望をみなぎらせている。実際に宝石によって財をなした人たちが少なからずいる。ラトナプラの表通りを歩いていると、宝石の売人が近づいてきて、おもむろに財布の奥から白い包み紙を取り出す。大事そうに開くその包み紙の中には、ルビーやサファイアなどが数個入っていて「買わないか」とすすめる。ここでは多くの人たちが、大小はあるものの何らかの形で宝石とかかわっている。

宝石の町ラトナプラは、今日になって有名になったのではなく大昔から世界に知れ渡っていた。現代もスリランカの宝石は世界的に有名だ。チャールズ皇太子が故ダイアナ妃に贈った婚約指輪のスリランカ産ブルーサファイアは比類ない美しさと豪華さで有名だ。

スリランカの歴史はそのものが宝石に関連していて、それらをたどっていくと必ず宝石の町ラトナプラにたどり着く。

ラトナプラは雨が多い。北方の聖なる山、スリーバーダを中心とした山々がモンスーンをさえぎるからだ。聖なる山のもたらす雨の中で、今日もラトナプラでは宝石採掘が各所でコツコツと行われている。市街地をちょっとはずれると、いたるところに採掘現場がある。ここでは水田や、空き地、川の底、またはそこに井戸を掘って地底深くもぐって宝石をさがす。宝石がどこに眠っていてどこにあるかわからない。川中で身体を半分いれて、ザルで砂礫をすくっては、ていねいに小石を一つひとつ調べて宝石をさがす(わん掛けという宝石選別法)。多くは徒労に終わるが、一瞬にして一攫千金の夢が実現することもある。

スリランカは光り耀く宝石の島。この宝石産地がラトナプラ。カラーストーンの世界的主要産地。美しく光り耀くルビー、サファイア、クリソベリル・キャッツアイ、アレキサンドライト等など世界に誇る宝石カラーストーンの大供給地である。

昔も今も世界に誇る宝石の産地、そこはスリランカ・ラトナプラ。

「楽しいジュエリーセールス」 著者:早川 武俊
早川宝石研究所ホームページ