CGL通信 vol22 「平成26年度宝石学会(日本)【講演会・総会・見学会報告】」

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CGL通信 vol22 「平成26年度宝石学会(日本)【講演会・総会・見学会報告】」

[講演会・総会報告]  北脇 裕士
[見学会報告] 江森 健太郎

平成26年の宝石学会(日本)講演会・総会が6月14日(土)に愛媛大学の城北キャンパス内の愛媛大学ミュージアム(愛大ミューズ)で開催されました。また、翌日の6月15日(日)には恒例の見学会が行われました。

本年度の総会・講演会は愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター長の入舩徹男教授の計らいにより同大学ミュージアム内の講堂を借用して行われました。入舩先生は世界的に著名な研究者で、超高圧実験を通して地球マントルや沈み込むプレートの構造と運動の解明に成果を挙げられています。また、高硬度のナノ多結晶ダイヤモンド(Nano-polycrystalline diamond, NPD )の開発者としても知られており、地球科学の世界に留まらず新素材の分野からも注目されています。これらの業績において多くの関連学会から表彰され、愛媛大学からは特別栄誉教授の称号を得られています。本学会においては『超高圧で創る多結晶ダイヤモンド~「世界最硬」ヒメダイヤの合成と応用~』との題目で特別講演をお願いしました。

特別講演中の入舩徹男博士
特別講演中の入舩徹男博士

14日(土)は午前9時から登録受付が開始され、9時30分から18時30分まで一般講演1 4 題が行われました(それぞれの演題については前号のCGL通信No.21をご覧ください)。
中央宝石研究所からはリサーチルームの久永所員が今号のP1~6にて掲載致しました『偽合成の特徴を示す特異な天然Ⅱ型ダイヤモンド』について講演を行いました。
本年度の講演会参加者はおよそ50名。内訳は鑑別技術者を中心に業界団体職員、大学・研究職者、宝飾業者および学生で、20代~80代までの幅広い年齢層が参加していました。
昼食後の空き時間には入舩先生のご厚意により創石実験室と命名された研究室を案内いただきました。ここには2009年に導入された世界最大級のマルチアンビル装置BOTCHAN-6000や高圧変形装置MADONNAⅡが設置されており、地球深部に迫る最先端の高圧実験が行われています。

マルチアンビル装置BOTCHAN-6000
マルチアンビル装置BOTCHAN-6000

さらに愛媛大学ミュージアムは自由見学が可能で、ここには創石実験室で生み出されたヒメダイヤが展示されており、見学者の注目を集めていました(展示品はカット研磨されていますが、ヒメダイヤは宝飾用としての用途は考えられていないとのことです)。このミュージアムは大学付属の博物館としては展示物の種類や内容がきわだって豊富です。地元の方々には無料で開放されており、愛媛大学の学術研究成果が積極的に発信されています。

愛媛大学ミュージアムに展示されているヒメダイヤ
愛媛大学ミュージアムに展示されているヒメダイヤ
博物館の展示品を熱心に見学する学会参加者
博物館の展示品を熱心に見学する学会参加者

総会においては昨年行われた評議員選挙の結果、新会長となられた神田久生博士が冒頭の挨拶をされ、今後の抱負を述べられました。 そして旧役員への謝意を表して、前会長の宮田雄史氏には感謝状が、真珠科学研究所の小松博氏と中央宝石研究所の堀川洋一氏に記念品が贈られました。その後、本年度の奨励賞が日独宝石研究所の古屋正貴氏に授与されました。

総会で挨拶をされる神田久生新会長
総会で挨拶をされる神田久生新会長

講演会終了後、午後7 時から同ミュージアム内の「セ・トリアン」に場所を移して懇親会が開かれました。講演会での緊張から解かれ和やかな雰囲気の中、参加者同士の交流が深められていました。

2日目は愛媛県総合科学博物館と別子銅山跡(マイントピア別子)において見学会が行われました。愛媛県総合科学博物館は、愛媛県民に科学技術に関する正しい理解を深めるための学習機会を提供し、科学技術に裏付けされた創造的風土の醸成を図るとともに、科学技術の進歩と愛媛県産業の発展に寄与することを目的として平成6年11月に愛媛県新居浜市にオープンしました。

愛媛県総合科学博物館
愛媛県総合科学博物館
展示されていた鉱物サンプル
展示されていた鉱物サンプル

屋外展示、科学技術館、産業館、自然館、プラネタリウムといった施設があります。自然館は宇宙のゾーン、地球のゾーン、愛媛のゾーンの3つに分けられ、動く恐竜模型や愛媛県に生息する動植物に関する展示がありました。また、鉱物標本類も充実しており見学者達を楽しませていました。
科学技術館は素のゾーン、生のゾーン、伝のゾーン、動のゾーンがあり、それぞれ体験装置を配置。楽しく物理実験ができる装置が多いのが特徴です。産業館は伝統産業と基幹産業の2つのゾーンがあり、愛媛県の伝統特産品についての紹介等がありました。

午後は別子銅山跡、マイントピア別子へと移動し、砂金採り体験と鉱山見学を行いました。別子銅山は1690年(元禄3年)に発見され、翌年から1973年(昭和48年)まで約280年間に70万トンを産出し、日本の貿易や近代化に寄与した銅山です。一貫して住友家が経営し、関連事業を興すことで発展をつづけ、住友が日本を代表する巨大財閥となる礎となりました。
砂金採り体験は用意された水槽に砂が敷かれており、その中に砂金が入っています。その砂金をパン(皿)で探し、採取するものです。

砂金採り体験の様子
砂金採り体験の様子
別子銅山入口
別子銅山入口

その後、旧火薬庫を利用して作られた333mの観光坑道を見学しました。坑道内には江戸時代の別子銅山に関する展示がある江戸ゾーン、明治以降近代化が進み世界有数となった別子銅山をテーマにした近代ゾーン、別子銅山での作業内容を遊びの中から学習できる遊学パーク体験ゾーンの3つがあります。別子銅山の歴史を体験しつつ学ぶことができ、好評でした。
愛媛県総合科学博物館、別子銅山跡共に鉱物とその歴史について多く学ぶことができ、見学会に参加された方々には大変有意義な一日となりました。