CGL通信 vol41 「日本鉱物科学会2017年年会・総会参加報告」

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CGL通信 vol41 「日本鉱物科学会2017年年会・総会参加報告」

PDFファイルはこちらから2017年11月PDFNo.41

リサーチ室 江森  健太郎

去る9月12日(火)から14日(木)までの3日間、愛媛大学城北キャンパスにて日本鉱物科学会の2017年年会・総会が行われました。弊社からは2名の技術者が参加し、それぞれ発表を行いました。以下に年会の概要を報告致します。

 

愛媛県松山市のシンボル、松山城
愛媛県松山市のシンボル、松山城

 

松山城天守閣から見た松山市内。眼下に愛媛大学城北キャンパスが見える
松山城天守閣から見た松山市内。眼下に愛媛大学城北キャンパスが見える

 

日本鉱物科学会とは

日本鉱物科学会(Japan Association of Mineralogical Science)は平成19年9月に日本鉱物科学会と日本岩石鉱物鉱床学会の2つの学会が統合・合併され発足し、現在は大学の研究者を中心におよそ900名の会員数を擁しています。日本鉱物科学会は鉱物科学およびこれに関する諸分野の学問の進歩と普及をはかることを目的としており、「出版物の発行(和文誌、英文誌、その他)」、「総会、講演会、研究部会、その他学術に関する集会および行事の開催」「研究の奨励および業績の表彰」等を主な事業として活動しています。2016年10月に、一般社団法人日本鉱物科学会として新たな出発の運びとなり、(1)社会的及び学術界における信頼性の向上、(2)責任明確化による法的安定、(3)学会による財産の保有等が確保され、コンプライアンスの高い団体として活動していくことになりました。2017年会・総会は、一般社団法人としてはじめての年会・総会になります。

 

日本鉱物科学会2014年年会・総会

愛媛大学は1949年に愛媛県内の旧制高校・専門学校計4校を母体として成立、現在7学部、6研究科を設置、城北、樽味、持田、重信の4キャンパスがあります。「学生中心の大学」「地域とともに輝く大学」「世界とつながる大学」の3つの理念を柱とし、2004年に「愛媛大学憲章」が定められています。今回、年会・総会が行われた城北キャンパスは太平洋戦争末期の沖縄防衛戦で最後まで奮闘し、全員が戦死した旧日本陸軍第22連隊の跡地でしたが、戦後愛媛大学の教育学部が設置され、その後他の学部が移転してきました。

 

地理的には松山城の北側に城北キャンパスがあります。交通手段としてはJR松山駅から伊予鉄道で20分程度かかりますが、本数も多く、アクセスは容易です。
今回の年会では、4件の受賞講演、11件のセッションで127件の口頭発表、72件のポスター発表が行われ、243名が参加しました。

 

総会の会場となった愛媛大学南加記念ホール
総会の会場となった愛媛大学南加記念ホール

 

1日目、12日(火)の午前9時より愛媛大学南加記念ホールにて総会が行われました。総会は上にも記した通り、一般社団法人化後はじめての総会となり、各種事業報告の他、研究の奨励及び業績の表彰式が行われました。総会のあとに受賞講演が行われ、平成28年度鉱物科学会賞第16回受賞者の愛媛大学大藤弘明氏、同第17回受賞者の京都大学川本竜彦氏、平成28年度鉱物科学会研究奨励賞第21回受賞者の愛媛大学境毅氏、同第22回受賞者の秋田大学越後卓也氏による講演がありました。また、同時進行でポスターセッションが開催されていました。受賞講演後はポスターセッションのコアタイムに指定され、ポスター発表者による説明、質疑応答、議論等が活発に行われていました。ポスター発表は学会開催期間3日間を通して行われており、3日間ともコアタイムは沢山の人で賑わっていました。また、午後14時からは「結晶構造・結晶化学・物性・結晶成長・応用鉱物」「変成岩とテクトニクス」「地球表層・環境・生命」が行われました。「結晶構造・結晶化学・物性・結晶成長・応用鉱物」で東京ジェムサイエンスの阿依アヒマディ氏が「日本産ジェダイト:歴史と特徴、および他の産地との比較」という宝石学より見た日本の国石である「ひすい」についての発表がありました。

 

日本鉱物科学会総会の様子
日本鉱物科学会総会の様子

 

ポスターセッション コアタイムの様子
ポスターセッション コアタイムの様子

 

2日目、13日(水)午前9時より「鉱物記載・分析評価」「放射光X線と中性子線の鉱物科学への応用」「岩石 ― 水相互作用」「地球外物質」のセッションがあり、弊社研究者は「鉱物記載・分析評価」のセッションで「多変量解析を用いた宝石鑑別」「HPHT法黄色合成ダイヤモンドの事前照射を含むHPHT処理による光学欠陥の変化」の2件の講演を行いました。講演後、多数の質問が寄せられ、鉱物科学会会員の方々の宝石学への関心の強さを感じ取ることができました。
3日目午前9時より「高圧科学・地球深部」「深成岩・火山岩及びサブダクションファクトリー」「火成作用に関する物質科学の新展開」「岩石・鉱物・鉱床一般」のセッションが行われ、午後3時半よりクロージングセレモニーが行われ、2017年日本鉱物科学会年会・総会は終了しました。

 

毎年開催される日本鉱物科学会年会では、最先端の鉱物学研究が発表され、弊社も毎年2件研究発表を行っています。鉱物学と宝石学は密接な関係があり、参加、聴講することで最先端の鉱物学に関する知識を得られ、普段接する機会が少ない研究者の方々と交流を深めることができます。来年も鉱物科学会年会に参加し、中央宝石研究所で行われている各種宝石についての最先端の研究を発表、深めていく予定です。なお、来年の日本鉱物科学会年会は9月19日 〜 21、山形大学小白川キャンパスで開催されます。◆