CGL通信 vol53 「国際宝石学会(IGC2021)日本開催について」

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CGL通信 vol53 「国際宝石学会(IGC2021)日本開催について」

PDFファイルはこちらから2019年11月PDFNo.53

リサーチ室 北脇 裕士

国際宝石学会 (International Gemmological Conference) 通称IGCは、宝石学における国際学会として最も歴史と伝統があります(http://www.igc-gemmology.org/)。この度、フランスのナントで行われた第36回本会議において、次回の国際宝石学会(IGC2021)を日本で開催することが正式に決定致しました。

 

IGCは国際的に著名な地質学者、鉱物学者、先端的なジェモロジストで構成されており、宝石学の発展と研究者の交流を目的に2年に1度本会議が開催されています。
本学会は、1951年にドイツのイーダーオーバーシュタインにおいてB.W. Anderson, E. Gubelin等によってフレームワークが形成され、翌1952年スイスのルガノで第1回会議が開かれました。発足当初はヨーロッパの各国で毎年開催されていましたが、近年では原則2年に1回、ヨーロッパとそれ以外の地域の各国で交互に開催されています。
日本からは近山晶氏、エドウィン佐々木氏の両名が1970年ベルギーでの第13回会議に初参加されています。1979年のドイツの会議からは宝石学会(日本)初代会長の砂川一郎博士も参加され、以降2007年のロシア会議まで砂川博士と近山氏の両名は日本代表としてご活躍されてきました。

 

IGCは他の一般的な学会とは異なり、クローズド・メンバー制が守られています。メンバーはデレゲート(Delegate) とオブザーバー(Observer) で構成されます。デレゲートは原則的に各国1~2名で、現在33ヶ国からの参加者で構成されています。このようなメンバー制は排他的な一面があるいっぽう、メンバーたちの互いに尊重し合う格式ある風土やアットホームで親密なファミリーという認識の交流が保たれています。そのため、非常に濃密な時間を共有することができ、きわめて質の高い情報交換が可能となります。
毎回の本会議においては、時々の先端的なトピックス(ヒスイの樹脂含浸、コランダムのBe処理、ハイブリッド・ダイヤモンドなど)、産地情報、分析技術などが報告されます(IGCのホームページにて本会議の講演要旨が過去4回分ダウンロード可能です)。

IGCの本会議は、発足当初には宝石学の発祥であるヨーロッパの各国を中心に開催されてきましたが、1981年に始めてヨーロッパ以外の国としてアジアの日本が選ばれました。当時の日本は宝石学のまさに発展途上期で、業界を挙げてのバックアップにより、日本会議が大成功を収めたことが当時の文献に誇らしげに記されています。また、この日本会議に参加されたIGCの現在のエグゼクティブたちにも好印象が記憶されており、再び日本で本会議を誘致するよう要望されてきました。
そして、2017年ナミビアで開催された第35回本会議において2021年の開催国が検討され、賛成多数で日本での開催が内定しました。宝石学会(日本)では、このIGCの日本開催を支援することが評議委員会に提案されて承認され、2018年の富山大学での総会で報告されました。また、一般社団法人日本宝石協会からもご支援をいただけることが理事会で決議されています。

 

IGCはクローズドなメンバー制ですが、日本開催時にはオープンセッションを設けて日本の業界関係者に広く開放したいと考えています。オープンセッションでは、海外著名研究者による複数の講演や業界関係者との懇親の場としてのレセプションも開催予定です。さらに本会議にも宝石学会(日本)および日本宝石協会の会員をはじめご支援いただいた方々からも一定数の参加を検討しています。
開催時期は2021年5月中旬を予定しており、東京での本会議と糸魚川ヒスイ峡へのプレカンファレンスツアーと伊勢志摩へのポストカンファレンスツアーを計画しております。

半世紀以上にわたり、先人から引き継がれてきた宝石学の殿堂とも言えるIGCが2021年に日本で開催されます。逼塞する国内の宝飾業界のさらなる飛躍と未来のリーダーの育成の機会として、IGC2021日本開催をご支援いただければ幸いです。◆

IGC2021日本開催が内定したナミビアのウイントフックでの記念撮影(2017年10月)
IGC2021日本開催が内定したナミビアのウイントフックでの記念撮影(2017年10月)