CGL通信 vol72 「オーストラリアのサファイア」
リサーチ室 北脇裕士
はじめに
オーストラリアでは1850 年頃のゴールドラッシュでサファイアが発見されて以降、主に大陸東部のアルカリ玄武岩の噴出地域に500 箇所以上の産出地が発見されて来ました。これらのうち商業的に重要な産地は3か所で、北から南へクイーンズランド(QLD)州北部のラバープレインズ(Lava plains)、クイーンズランド(QLD)州中部のルビーベイル(Ruby vale)/アナキー(Anakie)地域、そしてニューサウスウェールズ(NSW)州北部のインベレル(Inverell)/グレンイネス(Glen Innes)地域です(図-1)。

オーストラリアは1970 年代~ 1980 代の最盛期には全世界のサファイアの生産量の70%近くを産出していたと言われています。しかし、当時はタイのディーラーによって品質の良いものはスリランカ産やタイ/カンボジア産として販売され、色やクラリティの悪いものがオーストラリア産として供給されていました。そのためオーストラリア産には低品質というイメージが付きまといましたが、近年はオーストラリアのディーラーが自国のサファイアをプロモートし(写真-1)、世界のジュエリー・マーケットに供給しています(写真-2)(写真-3)。
本稿では、2025年7月に筆者が訪れた現在最も採掘が盛んなアナキー地域の情報を含めて、オーストラリアのサファイアの現状について報告します。



オーストラリアのサファイアの歴史
1.発見と初期の歴史(1850年代〜1900年代初頭)
* 偶然の発見
オーストラリアでサファイアが初めて発見されたのは、1851年のことです。ニューサウスウェールズ州のゴールドラッシュの際、カッジガング(Cudgegong)川やマッコーリー(Macquarie)川で金を探していた坑夫たちが、偶然サファイアを見つけたのが始まりです。
* 主要産地の発見
1854年にニューサウスウェールズ州のインベレル付近で金の採掘者たちによってサファイアが発見されました。しかし、金鉱夫たちにとってサファイアは興味の対象ではなく、商業採掘がはじまったのは半世紀も経った1919年でした。
1875年にはクイーンズランド州のルビーベイル/アナキー周辺で大規模な鉱床が見つかりました。アーチボルド・ジョン・リチャードソン(Archibald John Richardson)は鉄道敷設の測量中に偶然サファイアを発見し、パートナーたちとともに宝石を採掘する会社を設立して1880年に商業採掘を開始しました。1881年~1890年頃は、干ばつなどの悪条件や需要の低迷によりサファイアの採掘は伸び悩んでいましたが、1889年にイギリスのロンドンでオーストラリア産の宝石が展示されたことで認知度が高まりました。
* ロシア貴族との関わり
19世紀末から20世紀初頭にかけて、認知度の上がったオーストラリア産サファイアの多くはドイツの宝石商を通じてヨーロッパへ渡りました。また、当時のロシア貴族やロシア皇室の宝飾品に、オーストラリア産の深い青色のサファイアが多く使われています。これは、クイーンズランド州の宝石鉱山で働く採掘者の多くが元々ロシア出身だったことも影響しているようです。
2.停滞期(1910年代〜1950年代)
* 市場の崩壊
順調だったサファイア産業は、世界情勢の影響で一時衰退します。第一次世界大戦の勃発(1914年)とロシア革命(1917年)により、主要な顧客であったヨーロッパ市場とのつながりが絶たれ、需要が激減しました。
* ドア・ストッパーの伝説
1930年代、当時12歳の少年がクイーンズランド州で巨大な黒い石を見つけましたが、価値がわからず10年以上もの間、このサファイアを家の「ドア・ストッパー」として使われていました。これが後に世界最大級のスター・サファイア(733カラット)である「ブラック・スター・オブ・クイーンズランド」と判明しました。
3.黄金時代と機械化(1960年代〜1980年代)
* 機械化の導入
1960年代に入ると、技術革新によってオーストラリアは世界最大のサファイア生産国へと躍進します。それまでの手掘りから、ブルドーザーや大規模な選別機を使った機械化採掘へと移行し、生産量が劇的に増加しました。この頃、クイーンズランド州北部のラバープレインズも鉱山が開発され、活発に採掘が行われていたようです。
* タイとの関係
タイの業者が加熱処理技術を向上させたことで、それまで「色が濃すぎる」と敬遠されていたオーストラリア産の石が、美しいブルーに改善され、世界市場で広く流通するようになりました。1970年代になるとタイのバイヤーがオーストラリアを訪れ、品質の低いブルー・サファイアを大量に購入し、市場を独占していました。
* 世界シェア70%
1980年代には、世界のブルー・サファイアの約7割がオーストラリア産(主にニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州)であったと言われています。しかし、1980年代以降は、タイのカンチャナブリー(Kanchanaburi)やチャンタブリー(Chanthaburi)のサファイアの産出量が増加したため、オーストラリア産のサファイアの需要は低下していきます。
4. 現代(1990年代〜現在)
* 他産地の台頭
現在は、かつてのような圧倒的なシェアはないものの、オーストラリア産のサファイアは根強い人気を誇っています。しかし、マダガスカルやアフリカ諸国(ナイジェリア、カメルーン、エチオピアなど)での新鉱山の発見、またオーストラリア国内の採掘コストの上昇により、商業的なシェアは低下しました。
* 大規模採掘への期待
後述するFURA Gemsの参入により、アナキー地域でサファイアが大規模に開発されています。鉱山から市場までの責任ある追跡可能なルートを確保することに重点が置かれており、オーストラリア産サファイアが再び脚光を浴びる可能性があります。
* フォシッキング(観光採掘)
現在、多くの古い鉱山地域(ラバープレインズやインベレルなど)は観光地化されており、一般の人が趣味でサファイア掘りを楽しむ「フォシッキング(fossicking)」(写真-4)が人気のアクティビティとなっています。

オーストラリア産サファイアの特徴
1.地質
オーストラリア産サファイアの鉱床は、ほとんどすべてが6500万年前―50万年前の新生代に活動したアルカリ玄武岩の大規模な噴火と密接に関連しています。このタイプの鉱床は世界中の多くの地域で発見されており、タイ/カンボジア、ベトナム、中国、ナイジェリア、カメルーン、エチオピアなどに見られます。
実際、ラバープレインズの鉱床の中で最も新しいものは、わずか2万年から300万年前の玄武岩に関連していますが、アナキー鉱床の玄武岩は1500万年前から8100万年前のものです。最近の研究によると、インベレル/グレンイネス地域のサファイアに包有されているジルコン結晶のU-Pb平均年代が3500-3700万年とされており、サファイアもこの時期に生成したものと考えられています。
これらのサファイアの起源については依然として多くの謎が残されていますが、多くの研究者により、サファイアは玄武岩中の捕獲結晶(ゼノクリスト)であり、玄武岩マグマから直接結晶化したものではないと考えています。サファイア自体は、閃長岩などのアルカリに富むマグマの貫入によって、地殻とマントルの境界付近で形成された火成岩起源であり、玄武岩は、これらを地表まで運搬する役割を果たしたとされています。
2.サファイアの色調
*ブルー・サファイア
オーストラリア産のサファイアは、玄武岩関連起源で鉄分を多く含むため、一般的に「インクのような深い青」が特徴です(写真-5)。オーストラリアで商業的に産出するサファイアの70-90%は濃青色のサファイアです。その他にブルーグリーン、グリーン、イエローなどが見られます(写真-6)。


*パーティカラー・サファイア
近年では、単色のブルー・サファイア(写真-7)だけでなく、グリーンやイエローの色調と複合的に混ざり合ったパーティカラー(写真-8)が見られます。パーティカラーはその唯一無二の美しさから世界中のデザイナーや若者に再評価されています。特にイエローを主体としたパーティカラーはオーストラリアの国花であるゴールデンワトル(Golden Wattle)(写真-9)に因んでワトル・サファイア(Wattle Sapphire)と呼ばれ(写真-2)(写真-10)、オーストラリアの国民的な宝石となっています。




*ティール・サファイア
一般にサファイアと言えば青色が連想されるため、かつて緑味の強いブルー・サファイアは人気がありませんでした。しかし、近年はブルー~グリーンのサファイアはコガモ(Eurasian teal)の頭部の色(写真-11)になぞってティール・サファイア(写真-12)(写真-13)としてプロモートされており、世界的なトレンドとなっています。



3.加熱処理
オーストラリア産サファイアは歴史的にもほとんどのものがタイに送られ、「色調の改善」や「透明度の向上」のために加熱処理が施されています。オーストラリア産のブルー・サファイアは色調が濃いだけでなく、多くは曇った外観の原因となるクラウド状の微小包有物を多数内包しています。サファイアは一軸性の結晶で、結晶に入った光は複屈折を示します。その際、通常光(ω)はブルー、異常光(ε)はグリーンイシュブルーの多色性を示します。そのためブルー・サファイアは、理想的には美しいブルーが得られるように光軸に垂直にテーブル面が取られます。しかし、微小包有物が光を散乱させると、どの方向にオリエンテーションを取っても、ブルーにグリーンが混じった好ましくない色調になってしまいます。そのため、ほとんどのオーストラリア産のブルー・サファイアは透明度を向上させるために還元雰囲気で加熱されます。グリーン、イエロー、パーティカラーなどは非加熱のものもありますが、しばしば色調の改善のために酸化雰囲気で加熱されたり、透明度の改善のために還元雰囲気で加熱されたりしています。また、グリーンやブルーが混じったような不均一なイエローの石は、テリのある均一なイエローにするためにBeを用いた拡散加熱処理が施されることがあります。
ルビーベイル/アナキー地域
1.位置と交通
クイーンズランド州中部のサファイア鉱区であるルビーベイル/アナキー地域はシドニーから北北西に直線距離で1200km、ブリスベンから北西に直線距離で700kmに位置しています。この地域はセントラル・ハイランド地方の農村地域ですが、サファイアが発見されたことに因り、ジェムフィールズと呼ばれるようになりました。ジェムフィールズ地域内にはルビーベイル、アナキー、サファイアの3つの町がありましたが、2020年にクイーンズランド州政府により区画整理が行われ、ルビーベイル、アナキー・サイディング、サファイア・セントラルの3つの地域に置き換えられました。
交通手段として、アナキー・サイディングから東方40kmのエメラルドという町まではブリスベンから国内線による空路が複数便/日あります。エメラルドは人口15000人ほどの町ですが、ホテル、レストラン、スーパーマーケットがあり、ジェムフィールズ滞在の拠点となります。エメラルドからは車で路線番号A4のカプリコン・ハイウェイを利用して(写真-14)、40分ほどでサファイア鉱区のあるアナキーの町に到着します(写真-15)。ハイウェイは舗装されており、快適な道のりですが、鉱山が近くなると未舗装の道が続きます(写真-16)。道中は、オーストラリアだけあってカンガルーや野生動物に注意の標識が出ています(写真-17)。カンガルーは夜行性で、突然ジャンプして道路を横切るため、夜間の走行は危険が伴います。実際、所々に衝突の痕跡(遺骸)が残されています。カンガルーとの衝突は車への被害も大きくなるため、地方を走行する車のほとんどにはカンガルー・バーと呼ばれる車体を保護する装備が付けられています(写真-18)。


(左奥には野生のカンガルーが三匹)



* 町の名称
この地域にはサファイア・セントラル、ルビーベイル、エメラルドなど宝石に因んだ町の名称が多く見られます。サファイア・セントラルはその名前の通り、実際にサファイアが採掘される場所に因んでいます。しかし、エメラルドは宝石のエメラルドが産出されたわけではなく、実際はグリーンサファイアを当初はエメラルドと考えて町の名前となったようです。同様にルビーベイルでもルビーが産出されたわけではなく、ガーネットやジルコンなどの赤色石をルビーと誤認して町の名前となったようです。
2.採掘の現状
オーストラリア産サファイアの鉱床は、アルカリ玄武岩の大規模な噴火と密接に関連しています。サファイアは、玄武岩溶岩の中に直接見つかるのではなく、火山砕屑岩中やそれらが風化・浸食され、現在の河川沿いあるいは過去の河川跡に二次的に堆積した沖積砂礫層中に存在しています。サファイアを含む二次鉱床は地元では「Wash: ウォッシュ」と呼ばれ、通常、1~3mの表土の下に存在しています。含サファイア堆積物の厚さは場所によって大きく異なります。現在でも小規模な機械化採掘者と手工具による採掘者が生産を行っていますが、2021年以降、FURA Gemsにより大規模な露天掘りによる採掘が行われています(写真-19)。

* FURA Gems
FURA Gemsは、エメラルド、ルビー、サファイアなどのカラーストーンを生産する世界的な鉱山会社です。2017年に設立され、アラブ首長国連邦のドバイに本社があります。
同社によると、2018年にコロンビアのコスケス・エメラルド鉱山、2019年にモザンビークのモンテプエズのルビー採掘権を取得しており、2021年には約600万カラットのモザンビーク産ルビーと約30万カラットのコロンビア産エメラルドを管理しています。そして、2020年にはオーストラリアのクイーンズランドにあるグレートノーザン鉱山とカプリコーンサファイア鉱山の所有権を得て活発に操業されています(写真-20)。年間600万カラットが生産されており、現在オーストラリアで産出されているサファイアの約80%を占めているとしています。さらに近年は、マダガスカルのイラカカのサファイア鉱山も手掛けているとのことです。
* 探査と採掘
FURA Gemsによるサファイア鉱床の探鉱には最新の技術も使われています。重力異常の観測や航空磁気探査による広域的な地質構造の解明、衛星画像を用いて赤色酸化鉄の痕跡(風化した玄武岩は鉄分が多く赤っぽい土となる)の確認などが行われます。そして現地踏査を行い、地形や堆積環境の調査によりある程度の候補地を選定します(写真-21)。候補地ではグリッドごとに深さ30mほどのボーリング調査が行われ、サファイアを含む層の有無や層厚が調べられます(写真-22)。候補地が絞られると重機を用いた露天掘りによる試掘が行われ(写真-23)、経済的に採掘可能かが見積もられます。この地域は乾燥地帯のため、選鉱に必要な水を確保するために年に2回ほどある大雨の時期に試掘跡に水を貯めています(写真-24)。





FURA Gemsはこの地域に現在2つの巨大なプラントを稼働させています(写真-25)(写真-26)。採掘された土砂は大型のショベルカーで運ばれ(写真-27)、大型鉱石洗浄機に掛けられます(写真-28)。ここでは水とともに回転ドラムで粘土や不要物が除去され、振動スクリーンを通して重鉱物が分別されていきます(写真-29)。この段階ではサファイアの他にスピネル、ジルコン、イルメナイト、マグネタイト、オリビン、パイロキシン、アンフィボールなどの鉱物も残ります。その後は磁気選別(写真-30)により、イルメナイトやマグネタイトなどの磁力のある鉱物を取り除き、目視選別(写真-31)を経てサファイアが分離されます。分別されたサファイアは二次鉱床のためやや丸みを帯びた形状を示します(写真-32)。鉱山責任者のSuminda Galketiya氏によると、大型トラック一杯あたり10トンの土砂を一日に1200トン処理して最終的に多い日で8-10kgのサファイアが得られるそうです(写真-33)。採取されたサファイアはサイズや色ごとに分別されます(写真-34)。多くのものは濃色で黒っぽく見えますが、透過光では美しいブルーです(写真-35)。グリーンやイエローの他に稀にオレンジ色やピンク色も見つかります(写真-36)。その後、多くのものはタイに送られ加熱処理が施されます。












インベレル/グレンイネス地域
1.位置と交通
インベレルはニューサウスウェールズ州北部に位置する地方都市で、地域全体でサファイアが発見されたため「サファイア・シティ(The Sapphire City)」として知られています。ブリスベンからは南西に直線距離で320km、シドニーからは北へ直線距離で460kmに位置しています。1848年に牧畜地として開かれ、インベレルの名称はゲール語の「白鳥の集う場所」に由来しています。
ルビーベイル/アナキー地域からは路線番号A7、A55のカーナーヴォン・ハイウェイとB76のグイディル・ハイウェイなどを利用して970kmの道のりです(写真-37)。夜間の走行は野生動物(カンガルー)との接触が危険なので、日が昇ってから出発します。地方の道はほぼ渋滞が無いので1時間あたり100㎞の走行が計算できます。途中休憩を入れても日が沈むまでにインベレルに到着可能です。

2.採掘の現状
インベレル/グレンイネス地域は1970年代には100を超えるサファイアの採掘事業が行われており、オーストラリアのサファイア生産量の大部分を占めていました。その後、需要の弱まりと以前は豊富であった沖積鉱床の枯渇により、1980年代にはその数は大幅に減少し、近年、この地域で商業的に活動している鉱山はごくわずかとなりました。機械採掘を行っている代表的な企業としてWilsons Gems &Investmentsが知られており、2015年のGIA Field reportにおいて試掘の様子が紹介されていますが、残念ながら現在は操業を停止されているようです。1970年代に活躍されていた採掘業者は高齢化や資金不足などにより、今では多くが廃業されています。
現在、インベレル/グレンイネス地域のサファイア産業は、フォシッキングと呼ばれる観光採掘が主流で、地域経済の重要な収入源となっています(写真-4)。フォシッキングのやり方は施設によって異なるようですが、実際に採掘跡で観光客が手作業で砂礫を掘る場合とウォッシュと呼ばれるサファイアを含む砂礫層の砂利を購入してサファイアを探す場合があります。いずれにしても砂利を水洗して比重の大きい鉱物をより分けます。これらにはブルー・サファイアの他にパーティカラー・サファイア、ジルコン、ガーネットなどが含まれています。代表的な近隣のフォシッキング施設にBillabong Blue Sapphire Fossicking Park(写真-38)とInverell Sapphire Fossicking Parkなどがあります。

* インベレル観光案内所
インベレルの中心地、キャンベル通り沿いの中央ビジネス地区近くにインベレル観光案内所(visitor information center)があります(写真-39)。ここでは地元や地域の地図やパンフレットに加え、宝石や鉱物のコレクションも展示されています(写真-40)。特に「サファイア・シティ」と呼ばれるだけあって(写真-41)、インベレル/グレンイネス地域のサファイア採掘の歴史に関する資料(写真-42)(写真-43)や標本石(写真-44)(写真-45)が多数展示されており、この地域のサファイアに関する知識を得ることができます。また、この地域で採掘されたサファイアのルース(写真-46)やアクセサリーも販売されています。その他、レストランや無料の給水施設、大型車の駐車施設もあり、インベレル訪問の際に最初に立ち寄りたい場所です。








まとめ
オーストラリアはアルカリ玄武岩関連の火山砕屑岩およびそれらの二次堆積物中からサファイアが産出されています。19世紀の半ば頃のゴールドラッシュの際に発見され、19世紀後半から採掘が開始されます。20世紀前半の停滞期を経て1970年代に機械化により生産量が急増します。1970年代~1980年代はタイでの加熱処理を経て日本国内にも大量に輸入されています。当時、良質なものはタイ/カンボジア産、スリランカ産として、品質の悪いものはオーストラリア産として販売されたため、オーストラリア産のサファイアは低品質のイメージがありました。
ニューサウスウェールズ州のインベレル/グレンイネス地域は、かつてオーストラリア最大のサファイア産地でしたが、現在は商業的な採掘はほとんど行われておらず、フォシッキングと呼ばれる観光採掘が主流となっています。クイーンズランド州のルビーベイル/アナキー地域は現在、FURA Gemsが大規模な開発を行っており、大量のブルー・サファイアの他、パーティカラー・サファイアやブルー~グリーンのサファイア(ティール・サファイアと呼ばれる)を産出しています。近年は自国のディーラーによってオーストラリア産のサファイアがプロモートされ、個性的な色を求める世界の宝石市場で再評価されています。
主な参考文献
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