温度の影響といえば、不純物窒素の構造の問題もある。一般に、合成ダイヤモンドでは窒素原子は単原子状で含まれたIb型であり、天然ダイヤモンドと同じIa型(凝集窒素を含む)は高温高圧で熱処理することで生成することがGE社により報告されている。しかし私の体験で、合成温度が高いときには凝集窒素を含むこともあった。この結晶はI a 型とI b 型が混ざったものであった。これは、単原子で取り込まれた窒素原子が成長中に熱処理を受けて凝集したと考えられるが、もし、そうだとすれば、ひとつの結晶内でも初期にできた部分のほうが窒素の凝集はより進んでおり、Ia型になっていることになる。しかしながら、赤外線吸収スペクトル法で不純物窒素の分布を測定してみると、そんなに単純ではなかった。同じ時期にできたはずの場所でも明らかに窒素凝集度は違っていた。図12はその一例を示す。黄色の濃さは不均一であり、黄色の淡いところは窒素が少ないのではなく窒素が凝集したためであった。加熱による凝集速度については、「{111}セクターが凝集速度が高い」とか「電子線照射すると凝集速度が高くなる」というの報告もあり、共存する欠陥が多いと窒素の凝集が促進される傾向がある。そのことから、図12のような凝集度の不均一性は、窒素と共存する何らかの欠陥の不均一性に関係すると考えられる。この結晶の場合、結晶セクターの境界で窒素の凝集度が高いので、このあたりが欠陥濃度が高いといえる。これは成長速度と関係していると解釈している。一枚の写真とスペクトル測定で欠陥の生成や成長機構まで考えていくのもおもしろいものである。
2012年5月、ベルギーの大手鑑別機関からGemesis社製と思われる非開示のCVD合成ダイヤモンドを600個検査したとの報告があり、ダイヤモンド業界を賑わせました。それ以降、インドや中国の検査機関からも相次いでCVD合成ダイヤモンドに関する報告がなされており、小紙においても1ct以上のCVD合成ダイヤモンドについて報じています(CGL通信NO.12)。そして、これらのCVD合成ダイヤモンドはインドのスーラトで研磨され、天然ダイヤモンドのパーセルに混入されて米国、中国そして日本などに輸出されていると複数のメディアが報じています。インドの日刊英字新聞で英字新聞としては世界最多の発行部数を誇るTHE TIMES OF INDIAにも昨年以降、数回にわたってスーラトにおけるCVD合成ダイヤモンドの記事が掲載されています。昨年10月には「パーセルから合成ダイヤモンドが見つかる」 今年1月には「合成ダイヤモンドがスーラトの名を汚す」のタイトルで報じられています。他にも信頼できる情報筋からDTCのあるサイトホルダーがGemesis社と繋がりがあり、そのサイトホルダーから購入したロットの中にCVD合成ダイヤモンドが天然ダイヤモンドに混ぜられていたとのニュースも流されました。このような背景にはインド経済とメレダイヤモンドの価格変動が関連するとの見解もあります。インドの通貨ルピーの米ドルに対する価値が2012年以降急落しています。以前は1ドルに対して40ルピー台でしたが、2012年には50ルピー、現在は60ルピーを超えています。また、品質の高いメレダイヤモンドは中国での需要の高まりなどが影響して2011年~2013年に価格が高騰したようです。このような状況下、スーラトの研磨業界では数万人単位の失業者を生み出したようで、少しでも利益を確保するための手段としてやむなくCVD合成の混入が行われたのではないかと見られています。
しかし、スーラトの研磨工場でCVD合成ダイヤモンドの話題に触れると、彼らはCVDがsynthetic(合成)であることは知っているが、我々は扱っていないと口を揃えて答えます。CVD合成ダイヤモンドがあれば入手したいといっても、モアッサナイト(彼らはモイザナイトと発音します)やCZ(キュービックジルコニア)なら手に入ると話題をそらせます。良く聞くと、スーラトのある研磨工場ではモアッサナイトやCZのメレ石が天然ダイヤモンドに混入されているとのことでした。この類似石混入の話題についても複数の関係者から確認できましたので、CVD合成ダイヤモンドとともに今後注意する必要がありそうです。(タンザニア・ケニア報告につづく)
前回、ダイヤモンドの高圧合成法について述べた。今回は、合成されたダイヤモンドの形の特徴を紹介する。宝石のダイヤモンドを評価する場合、4Cという言葉をよく聞く。この4つのCはCarat Cut Color Clarityの頭文字のCであるが、結晶としての特徴という視点からは、この4Cは、それぞれ、サイズ、形、色、含有物ということができよう。今回はそのうちの形ということになる。私は、結晶成長のメカニズムに関心があったため、合成実験で得られた結晶を見るとき、その結晶がどのように成長してきたのであろうか、ということがいつも頭にあった。それで研究を続けながら、結晶の形や表面模様を注意深く観察したものである。
Post Excursion は約60 名( 中央宝石研究所からは北脇、江森) が参加しました。10 月18 日、我々はハノイを出発し約10 時間、2 台のバスに揺られLuc Yen の町に到着しました。Luc Yen はTay( タイ) 族、Dao( ザオ) 族、Nung( ヌン) 族等少数民族が農作を主に生活をしていた地域でしたが、良質のルビー鉱床が発見され急速に様変わりしたという話です。10 月19 日バスに乗り、Luc Yen 鉱山を目指しました。天候は残念ながら雨でした。バスで1 時間ほど移動し、我々は鉱夫達が住む村へと到着しました。
村からLuc Yen 鉱山までは悪路のため、徒歩で鉱山に向けて進みます。途中、40 分程度進んだところに二次鉱床があり、鉱床の傍にあるテントで採掘されたサンプルを見学してきました( 写真)。
二次鉱床。雨のため、作業は行われていませんでした。
この二次鉱床より1時間半近く、細い山道を登ることになります。雨のため、地面はぬかるんでおり、急な斜面では滑ってしまう見学者も多く、道中は様々な困難に出くわすことになり、見学者の中には途中で引き返すことになった人たちも多くいました。到着したLuc Yen 鉱山は、天候のため作業している鉱夫はいませんでしたが、大理石の中に埋まった沢山の宝石原石を見出だすことができました。
Luc Yen 鉱山でルビーを見つけることはできませんでしたが、大理石の中に埋まったスピネル( 写真) とパーガサイトを採取しました。
二次鉱床の傍のテント内の様子
Luc Yen鉱山で見つけたスピネル
Luc Yen 鉱山の見学、サンプル採取を終えた我々は村まで歩き、バスでLuc Yen まで戻ります。夕食を済ませた後、学校の講堂で地元の方々より、伝統音楽、ダンス等を披露していただき、歓迎していただきました。
日本鉱物科学会(Japan Association of Mineralogical Sciences)は平成19年9月に日本鉱物科学会と日本岩石鉱物鉱床学会の2つの学会が統合・合併され発足し、現在は大学の研究者を中心におよそ1000名の会員数を擁しています。 日本鉱物科学会は鉱物科学およびこれに関する諸分野の学問の進歩と普及をはかることを目的としており、「出版物の発行(和文誌、英文誌、その他)」、「総会、講演会、研究部会、その他学術に関する集会および行事の開催」「研究の奨励および業績の表彰」等を主な事業として活動しています。