International Gem and Jewelry Conference(国際宝石・宝飾品学会)はGIT(The Gem and Jewelry Institute of Thailand)が主催する国際的に有数の宝飾関連学会の一つです。第一回目は2006年、第二回目は2009年、そして今回は2012年12月に第三回目としてGIT 2012が開催されました。GITはLMHC(ラボマニュアル調整委員会)にも属する国際的にも著名な宝石検査機関で、当研究所とは科学技術に関する基本合意を締結し、密接な技術交流を諮っています。本学会はGITが主催していますが、TGJTA(タイ宝石・宝飾品協会)、CGA(チャンタブリ宝石・宝飾品協会)、チュラロンコン大学、国家商工省、鉱物資源局などが後援しており、まさに国を挙げての国際会議といえます。また、本会議運営のため15ヵ国31名の国際技術委員会が結成され、当研究所の堀川もその一役を担いました。
[1]Wang W., Moses T.M., Linares R., Shigley J. E., Hall M. and Butler J.E. (2003) Gem-quarity synthetic diamonds grown by a chemical vapor deposition (CVD) method. Genms & Gemology, vol.39, No.4, pp268-283
[2]Wang W., Hall M.S., Moe K.S., Tower J. and Moses T.M. (2007) Latest-generation CVD-grown synthetic diamonds from Apollo Diamond Inc.. Gems & Gemology, vol.43, No.4, pp294-312
[3]Kitawaki H., Abduriyim A., Kawano K. and Okano M. (2010) Identification of CVD-grown synthetic melee pink diamond. Journal of gemology, vol.32, No.1-4, pp23-30
[4]Wang W., and Moses T.M. (2011) Gem quality CVD synthetic diamonds from Gemesis. Gems & Gemology, vol.47, No.3, pp227-228
[5]Even-Zohar C. (2012) Synthetic specifically “made to defraud”. Diamond Intelligence Briefs, vol.27, No.709, pp7281-7293
[6]Song Z., Lu T., Lan Y., Shen M., Ke J., Liu J and Zhang Y. (2012) The identification features of undisclosed loose and mounted CVD synthetic diamonds which have appeared recently in the NGTC laboratory, Journal of Gemmology, vol33, No.1-4, pp45-48
[7]Wan W and Moe K.S. (2010) CVD synthetic diamond over one carat. Gems & Gemology, vol.46, No.3, pp144-145
[8]Wang W., Doering P., Tower J., Lu R., Eaton-Magana S., Johnson P., Emerson E and Moses T. (2010) Strongly colored pink CVD lab-grown diamonds. Gems & Gemology, vol.46, No.1, pp4-17
[9]Breeding C.M. and Wang W. (2008) Occurrence of the Si-V defect in natural colorless gem diamonds. Diamond and Related Materials, vol.17, pp1335-1344
[10]Martineau P.M., Lawson S.C., Taylor A.J., Quinn S.J., Evans D.J.F., and Crowder M.J. (2004) Identification of synthetic diamond grown using chemical vapor deposition (CVD). Gems & Gemology, vol.40, No.1, pp2-25
[11]MISRA, Devi Shanker. (2012) Method for growing white color diamonds by using diborane and nitrogen in combination in a Microwave Plasma Chemical Vapor Deposition system. International Patent No. 2012044251
[12]Sumida N. and Lang A.R. (1981) Inst. Phys. Conf. Ser, No.60, Section6, pp319
[13]Tallaire A., Collins A.T., Charles D., Achard J., Sussmann R., Gicquel A., Newton A.M and Cruddace R.J. (2006) Characterisation of high-quality thick single-crystal diamond grown by CVD with a low nitrogen addition. Diamond and Related M.E., Edmonds Materials, vol.9, pp1439-1449
スリランカは世界的に著名な宝石を多く産出していますが、とりわけサファイアは有名です。NYのアメリカ自然史博物館に展示されている“Star of India”は世界でも最大級のスリランカ産のブルースターサファイアです。また、1981年にチャールズ皇太子からダイアナ妃へ、2010年ウィリアム王子からキャサリン妃へと贈られた英国王室継承の18ctのブルーサファイアもスリランカ産として話題を集めました。
マダガスカル産では幸運なことに最近見つかったばかりの新しい鉱山のものを6ピース見ることが出来ました。これらは2012年の4月にマダガスカル中央部のディディ村周辺で見つかったものです。ディディ村は首都のアンタナナリボから北東に150kmくらいの場所で、ルビーの産地として知られるバトゥマンドリーとアンディラムナの中間点位に位置します。2012年のPardieuらによる研究論文(Pardieu et al., 2012a ※1)によると、現在この地ではサファイアラッシュが起きており、主にスリランカのバイヤーが数百人買い付けに集まっているそうです。今後この地のサファイアが日本の市場にも登場するかもしれません。これらのブルーサファイアを強力なスポットライトの下でみると若干紫味が感じられました。ルーペで内部特徴を観察すると、従来のマダガスカル産ブルーサファイアに一般的なシルクインクルージョンやクラウド状の微小インクルージョンは認められませんでした。一部に針状インクルージョンとおそらくグラファイトと思われる黒色板状結晶が見られました。その他に褐色の酸化膜が認められました。
カタラガマはコロンボから南東へおよそ280kmに位置する歴史の古い街です。1970年代の後半までサファイアの鉱区として知られていましたが、以降は産出がなく採掘はほとんど行われていませんでした。ところが、2012年の2月中旬、カタラガマからルヌガムウェヘラへの道路建設の際に新たにブルーサファイアが発見され、俄かに採掘ラッシュが起きました。文献Zoysa et al.(2012) ※5 及びPardieu et al.(2012b)によると、2012年2月13日、道路建設用に敷き詰められていた土砂から地元民によって偶然ブルーサファイアがいくつか発見されました。数日間続いていた雨が土砂を洗い、ブルーサファイアを露出させて発見を容易にしていたようです。見つけられたサファイアには何百キャラットのものも含まれており、筆者もあるディーラーから700ctの原石の写真を見せていただきました。
カタラガマ道路建設現場でのブルーサファイアの
採掘(写真提供:Gamini Zoysa)
カタラガマ鉱区でのブルーサファイアの採掘
(写真提供:Gamini Zoysa)
このニュースは携帯電話やメール等によって瞬く間にスリランカ中に広がりました。英国王室のウィリアム王子の婚約に纏わるスリランカ産ブルーサファイアの人気も相まって、数日後には10,000~30,000人もの一攫千金を夢見た人々がこの発見の地に殺到しました。その後、この道路建設用に使用されている土砂は数km離れた農場から運び込まれていることが分かり、この農場を含む一帯が国によって管理されるようになりました。2月24日にはSri Lanka`s National Gem & Jewellery Authority(NGJA)によってこのおよそ14,000km2の土地が49の鉱区に分割され、それぞれがオークションにかけられました。
【 参考文献 】
※1 Pardieu V., Rakotosaora N., Noverraz M. and Bryl L.P. (2012a) Ruby and Sapphire Rush near Didy,Madagascar, GIA news from research
※2 Kuo C.S. (2003) The Mineral Industry of Sri Lanka, U.S. Geological Survey Minerals Year Book 2003
※3 Kuo C.S. (2011) The Mineral Industry of Sri Lanka, U.S. Geological Survey Minerals Year Book 2010
※4 Hughes R. W. (1977) ruby & sapphire RWH Publishing Boulder, Colorado USA
※5 Zoysa G. and Rahuman S. (2012) Sapphire Rush in Kataragama. InColor, issue19 ,pp56-61
※6 Pardieu V., Dubinsky E. V., Sangsawong S. and Chauvire B. (2012b) Sappire rush near Kataragama,Sri Lanka, GIA news from research
CVDとはChemical Vapor Depositionの略で、化学的に気体状態から積層させる合成法を意味しており、日本語では化学気相成長法や化学蒸着法と呼ばれます。MPCVDと書かれている場合は、Microwave Plasma Chemical Vapor Depositionの略でマイクロ波プラズマ法と呼ばれています。
Apollo Diamond社の合成ダイヤモンドもMPCVD法を用いて作られています。