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USA会議レポート

AGTAショーが開催されたツーソンコンベンションセンター

AGTAショーが開催された
ツーソンコンベンションセンター

人気のGJXショー入口

人気のGJXショー入口

本年も1月末から2月に掛けて米国のアリゾナ州ツーソンでジェム・ミネラル&フォッシルショーが開催されました。筆者も1月30日から一週間幾つかの展示会場を視察して参りましたが、今回のツーソンは例年と比べ気候も含めて展示会の状況も全く異常と言えるくらい違ったものでした。

この時期にツーソンの町全体で開かれているおよそ44の展示会は2、3日の違いはあれ殆んど同時に開催されています。ですから、バイヤーは一日に幾つかの展示会場を無料シャトルバスで回ることも可能です。それらの中で大きな展示会場と言えばコンベンションセンターで行われているAGTAショーとその通りを挟んだ空き地に巨大なテントを建てて行われているGJXショー。ここ最近ではAGTAショーよりもGJXショーの方が人気も高く出展希望者が多く、昨年からは別棟のテントが建った程です。更にコンベンションセンターから通りを渡らずに徒歩で3分位のところあるWGJSショーです。ここはGLDAショーが以前使用していたホリデーインの建物で、その後ラッディッソン・ホテルとなり、現在はホテル・アリゾナと云うホテルに変わっていますが、GLDAショー時代の出展者達の多くが当時と同じ場所にブースを構えています。GLDAショー自体はツーソン郊外にあるゴルフ場を有するリゾートホテルのスターパス・マリオットに移っており、コンベンションセンター間を往復する専用シャトルで集客に努めています。

屋外の会場では巨大な水晶の丸玉も売られている

屋外の会場では巨大な
水晶の丸玉も売られている

ショーは郊外でも数多く開かれており、その中で最も集客力のある展示会と言えばツーソン国際空港に寄りにあるGLW-Hショー(通称:ホリドーム)が有ります。ここへは一般人も入れることからアクセサリーのような製品も多く、手ごろな価格帯のものが豊富であるため常に人でごった返しています。

今年のツーソンもやはり世界的な異常気象の影響を受けており、筆者がツーソンに入いる前の週に積雪のため空港は閉鎖されたそうです。この地方はカリフォルニア州からアリゾナ州及びメキシコ合衆国ソノラ州にかけて広がるソノラ砂漠に属し、朝昼晩で寒暖の差が激しい砂漠特有の気候で、空気は非常に乾燥しています。冬は北部の山岳地帯でまれに雪も降りますが、空港や市街地に雪が降ったと聞いたのはこれが初めてです。そのような天候の影響で翌週のAGTAショーとGJXショーの初日は朝から雨、気温も摂氏10度程度までしか上がりませんでした。このような天候が原因では無いでしょうが、AGTAショーとGJXショーは初日でも来場者数が少なく、例年なら初日の午前中は入場者バッジを取るために長蛇の列に並ばなければいけないのにどちらのショーの登録カウンターも10人程度しか並んでいない状況でした。今年は総合的に何処のショーでも来場者の数が減っているようです。中でもひどいと感じたのはホテル・アリゾナで開かれているWGJSショーで、立地条件が最良であるにも拘らずホテルの地下から2階までの展示スペースには空きブースが目立ち、来場者もそれ程入っていないためまるでショーの最終日午後のように閑散とした雰囲気でした。

高さ2mもある巨大水晶を入口に展示したリバーパークイン

高さ2mもある巨大水晶を
入口に展示したリバーパークイン

いろいろな色に染色されたトルコ石のブロック

いろいろな色に染色された
トルコ石のブロック

肝心の宝石に関して言えば、毎年のようにツーソンでは話題に上る宝石が出て来るのですが今年は特に話題になるような石は有りませんでした。3年前はペツォッタイト、昨年はモザンビーク産のパライバカラーのトルマリンが大きな関心事で何処へ行っても話題の中心でしたが、ペツォッタイトは殆んど扱うディラーも少なくなったようです。モザンビーク産パライバ・トルマリンは結構な数を見かけましたが、モザンビークでもこの種のトルマリン鉱脈はかなり枯渇して来ており、目にする石の量も今年がピークではないかという人もいました。最近市場で問題になっているベリリウム拡散処理ブルーサファイアに関しても思った程ツーソンでは騒がれてなく、AGTAショーの一部の出展者だけがブルーサファイアの傍に“NO Be”とか“NO DIFFUSION”と記載したカードを出して自分の石は安全ですよといった意思表示を示している程度でした。

最近は全米を含めて、海外でのジュエリーショーがやたら多く、このようにあっちこっちでやっているとかえってインパクトもなくなり、また各ジュエリーショー開催地に飛ぶ旅費も原油の値上がりで影響を受けています。ツーソンに関して云えば、この時期ホテルの室料も毎年上昇し続けており、出展者にもバイヤーにも良い材料は見受けられません。来年のツーソンジュエリーショーはどうなっているかなど心配するのは早いかも知れませんが、何となくツーソン離れが起きているようです。

ツーソンショーの一覧
Showの名称 開催場所 開催日
1820 Oracle Wholesale Show 1820 Oracle Wholesale Show 1/26~2/11
A.B.C. Direct East A.B.C. Direct East 1/27~2/10
A.B.C. Direct West A.B.C. Direct West 1/27~2/10
African Art Village African Art Village 1/27~2/11
AKS Gem Shows Howard Johnson 1/27~2/10
AKS Gem Shows La Quinta Inn 1/27~2/10
American Gem Trade Association Tucson Convention Center 1/31~2/05
American Indian Exposition Flamingo Hotel 1/28~2/10
Arizona Mineral & Fossil Shows Clarion Hotel/Randolph Park 1/27~2/10
Arizona Mineral & Fossil Shows InnSuites Hotel 1/27~2/10
Arizona Mineral & Fossil Shows Minearl & Fossil Marketplace 1/27~2/10
Arizona Mineral & Fossil Shows Quality Inn/Benson Hwy. 1/27~2/10
Arizona Mineral & Fossil Shows Ramada Limited 1/27~2/10
The Bead Renaissance Show Bead Renaissnace Pavilion 1/29~2/05
Beaudry Gem & Mineral Show BGMS Gem Central 1/27~2/04
The Best Bead Show Kino Veterans Memorial Community Center 1/31~2/04
Create Your Style With Swarovski Omni Tucson National Golf Resort & Spa 1/31~2/03
Executive Inn Mineral & Fossil Show Best Western Executive Inn 1/27~2/10
Fine Minerals International Fine Minerals International Gem & Mineral Forum 1/28~2/10
Gem & Lapidary Dealers Association Starr Pass Marriott Resort & Spa 1/30~2/04
Gem & Lapidary Wholesalers Gem Mall 1/27~2/09
Gem & Lapidary Wholesalers Rodeway Inn/Quality Inn 1/27~2/09
Gem & Lapidary Wholesalers Holiday Inn/Holidome 2/01~2/09
GJX Gem & Jewelry Show Gem & Jewelry Exchange 1/31~2/05
Globe-X Gem & Mineral Show Days Inn/Convention Center 1/26~2/11
Granada Avenue Mineral Show Granada Ave. & St.Mary’s Rd. 1/27~2/10
J.O.G.S. International Exhibits Tucson Expo Center 1/26~2/06
Jewelry, Gem & Mineral Exposition JG & M Expo/Michigan St. 1/27~2/11
Jewelry, Gem & Mineral Exposition JG & M Expo/Simpson St. 1/27~2/11
Madagascar MineralsTM Gem Show Norcross-Madagascar Gallery 1/26~2/12
Mineral & Fossil Co-op Mineral & Fossil Co-op 1/27~2/10
Pueblo Gem & Mineral Show Riverpark Inn 1/27~2/08
Rapa River Gem & Mineral Show Rapa River 1/26~2/11
Rio Grande Catalog in Motion Hilton Tucson East 2/02~2/05
Spectrum of Stones Econo Lodge 1/27~2/10
T Rex Musem Show T Rex Museum 1/27~2/10
To Bead True Blue Manning House Mansion 1/30~2/04
Tucson Electric Park Gem & Mineral Show Tucson Electric Park/Kino Sports Complex 1/27~2/11
Tucson Electric Park RV Gem Show Tucson Electric Park/Kino Sports Complex 1/27~2/11
Tucson Gem and Mineral ShowTM Tucson Convention Center 2/08~2/11
Tucson Showplace Tucson Showplace 1/26~2/11
Tucson Westward Look Mineral Show Westward Look Resort 2/02~2/06
The Whole Bead Show Windmill Inn 1/31~2/05
Worldwide Gem & Jewelry Show The Hotel Arizona 1/31~2/05

ラボトピックス「ハックマナイト」

ハックマナイト

様々な色のハックマナイト

ソーダライトの変種であるハックマナイトは、紫外線を照射すると変色し照射を止めると元の色に戻る性質を持ち、それが何度でも繰り返されるため、コレクターストーンとして人気のある石です。ハックマナイトはロシアのコラ半島で最初に発見され、その名前はフィンランドの岩石学者であるビクトル・ハックマンに因んで名づけられました。
今回様々な産地のハックマナイトを検査する機会を得たのでその特徴を紹介します。

一般検査

今回検査したハックマナイトの産地別内訳はミャンマー・パキスタン・アフガニスタン・ロシア・カナダ産が各3個、グリーンランド産2個の計17個で、通常の光(紫外線照射前)で見たときに紫色・赤紫色・灰色・白色で透明から不透明のカット石と原石です。その内検査を行ったカット石のデータの一部を 表1 に示します。

表1

産地 透明度 重量(ct) 比重 屈折率
ミャンマー01 紫色 半透明 5.852 2.28 1.47
ミャンマー02 灰色 不透明 6.545 2.29 1.48
ミャンマー03 赤紫色 不透明 5.975 2.28 1.48
パキスタン 薄紫色 透明 1.750 2.30 1.48
アフガニスタン 赤紫色 不透明 1.428 2.29 1.48
ロシア 白色 不透明 0.860 2.27 1.48
カナダ 白色・ピンク色 不透明 5.717 2.50 1.48
グリーンランド 紫色 不透明 6.781 2.36 1.48

※屈折率はスポット法

紫外線 照射前と照射後

通常の光の下で見られる色は様々ですが、長波紫外線照射後は赤紫~紫色に変化しました。その前後変化をミャンマー産(写真1)とカナダ産(写真2)で示します。

写真1 ミャンマー産01
(左:紫外線照射前、右:紫外線照射後)

写真2 カナダ産
(左:紫外線照射前、右:紫外線照射後)


また、照射前後の色についてThe Munsell Book Of Color方式で示したのが 表2 です。

表2

産地 照射前 照射後
ミャンマー01 10PB 4/10 2.5P 2/10
ミャンマー02 5YR 5/1 10P 3/8
ミャンマー03 7.5P 6/6 5P 3/10
パキスタン 7.5P 8/2 5P 8/4
アフガニスタン 7.5P 6/8 5P 4/10
ロシア 10Y 8/1 2.5RP 5/10
カナダ 10P 6/10 2.5RP 4/12
グリーンランド 7.5P 4/8 5P 2/8

変化後の色の濃さは照射時間の長さに比例しており、長く照射していたものほど濃く、色の戻りもゆっくりでした。また紫外線照射時にはオレンジ色の蛍光を発しますが、この蛍光色も最初はアプリコットオレンジ色で時間経過に伴いオレンジ色が濃くなっていくのが観察されました。

赤外分光(FT-IR)

FT-IRの形は、大きく3つのパターンに分かれました。

(1)4000cm-1 より低波数側に吸収がないパターン図1

図1

ミャンマー産とロシア産に見られたパターンで、4538cm-1 と5150~5205cm-1 に吸収があります。

(2)2140~2860cm-1 に透過帯があるパターン図2

図2

アフガニスタン・カナダ・グリーンランド産に見られたパターンで、2140~2860cm-1 に山があり、5137 ・ 5198cm-1 に吸収があります。アフガニスタン産の石には、4182 ・ 4251 ・ 4323cm-1 にも吸収が観察されます。

(3)4000cm-1 より高波数側に吸収がないパターン図3

図3

パキスタン産に見られ、2000~3500cm-1 の山に細かい吸収(2405 ・ 2426 ・ 2528 ・ 2548 ・ 2679 ・ 2742 ・ 2924 ・ 2992 ・ 3022 ・ 3052 ・ 3414cm-1 )があります。

可視分光

ハックマナイトの色変化は紫外線照射後、数分から数十分継続するため、紫外線照射前と後の可視分光データの測定が可能です。図4 に示す分光チャートはミャンマー産のものです。紫外線照射後に530~550nmを中心とした吸収が深くなっています。この吸収帯の深さは色の濃さを反映するため、照射後赤紫色が濃くなったことが分光的にも分かります。

図4(点線;紫外線照射前、実線;紫外線照射後)

元素分析(EDS)

ソーダライトの化学組成式はNa8Al6Si6O24Cl2で表わされ、ハックマナイトは塩素(Cl)を置換して少量の硫黄(S)を含み、この硫黄の電子状態により色が変化すると説明されています。蛍光X線元素分析装置(EDS)でサンプル石を分析し、色別(照射前)にまとめたものが表3で、どの石にも硫黄の存在が確認されます。硫黄がほとんど含まれない石と1%を超える石とがありますが、観察される色変化の大きさと硫黄の量比とは直接的には結びつかないようです。

表3

Na(wt%) Al(wt%) Si(wt%) Cl(wt%) S(wt%)
白~灰色 22-25 30 36-38 2.3-5.8 0.24-1.10
赤紫色 22-27 25-31 34-36 6.2-7.0 0.05-0.21
薄紫色 27 30 35 6.8 0.23
紫色 25 31 36 4.9-6.3 0.15-1.40

今回検査した石については、赤外分光(FT-IR)のパターンが産地により異なるということが興味深い点です。サンプル数が少ないことと地質学的な背景が不確かなため類推の域を出ませんが、FT-IRによりおおまかな産地分類が可能かもしれないことを示唆しました。その他の検査もハックマナイトの鑑別に有効であることが分かりました。
ハックマナイトの鑑別結果は、【鉱物名 天然ソーダライト】【宝石名 ハックマナイト】となります。なお、当研究所の鑑別書には備考欄に【ハックマナイトは、一般に紫外線照射により色が変化することがあります。また、変化した色は時間が経過すると元に戻ります。】と表記されます。

小売店様向け宝石の知識「アンティークジュエリー3」

骨董品の鑑定とは、年代を見て値段をつけること。鑑別とは、本物かニセモノかを見分け時代だけをいうこと。値段をつけるといっても、「バブル景気」の時に高く買って、いま大幅に値下がりして安くなったもの。さらには「騙されて高く買った」もの。骨董品には値段があってないようなものと云ってしまえばそれまでだが、骨董品の鑑定は非常に困難がともなう。ただアンティークのなかで絵画、陶磁器、人形など一部の古美術品は一定の鑑定物差しが業界に出来ていて古物相場があるようだ。

東洋骨董品の中で翡翠の玉彫刻そして玉装身具を蒐集している年配の方々も多い。翡翠は、中国で昔から皇帝の最高の収集品となっていたので、中国各地の博物館には多くの翡翠骨董品が所蔵されている。なかでも北京及び台北の故宮博物院には、たくさんの玉彫刻が展示されていて圧巻である。中国人の「富と権力の象徴」とされてきた「玉(ぎょく)」。この翡翠は軟玉(Nephrite)と硬玉(Jadeite)とがある。軟玉は中国の崑崙山脈の麓を流れる白玉川が主産地であり、硬玉はミャンマー(ビルマ)北部が主産地で別種の鉱物である。さて翡翠を表わす玉の字は王と異なる。王様の王は正確には横三本のうち上の二本が上に片寄っている。玉の字は、玉が三つ連なっている象形で、縦の棒は三つの玉を貫いているところを示す。玉は「石の美しさを示し、五徳あるもの」であると云われてきた。五徳とは何かと云えば、仁、義、智、勇、厳の五つであって、昔の中国の人は玉を見たときにその美の中に五徳を想定したようだ。この玉彫刻には、日本でも古くから特別な収集家がおり、貴重な骨董品目となっている。(翡翠については別号に既に詳述したのでご参照ください。)

さて宝石の王様ダイヤモンドについてだが、最近購入した資産価値がある大粒ダイヤモンドには、品質評価基準4Cの詳細を記述したダイヤモンド・グレーディング・レポートが添付されているので、おおまかの現在の相場を計算できる。ただしダイヤモンドといえども、世界相場、為替相場、景気動向の影響を受けている。100年以上前の昔のダイヤモンド、アンティークジュエリーに属するものにはダイヤモンド・グレーディング・レポートはついていない。ダイヤモンドの4C検査について理論と技法を発案し開発したのは米国GIAで創立は1931年で約76年の歴史である。

ダイヤモンドの価値を決定する4Cの中で、カット・グレードは人為的にダイヤモンドの光り輝きを引き出すことができる。14世紀にダイヤモンドの粉末をオリーブ油でとき、これを研磨剤にして原石を研磨できるようになった。ダイヤモンド原石八面体の三角形の面に対し研磨したテーブルカットからローゼンツ・カットを経てローズカットなどが登場してきた。

アンティークジュエリーに使用されているダイヤモンドには、このローズカットのものが多い。したがってローズカットについての知識も不可欠だ。その後19世紀になって最高の輝きを発揮する現在のブリリアントカットに近いカットが登場してくる。

さてアンティークジュエリーで重要な要素は、その製造された当時の衣裳や歴史的背景も大事である。ジュエリーを着用するときのTPO(時・場所・場合)である。アンティークジュエリーが流行した時代や使用された場所、当時の衣裳との調和である。それらが現代とマッチするか。単なる鑑賞用、資産用なのか。実際に着用使用するかが問題となる。

ジュエリーを理解するには、先ず実物を手に取り、よく観察することだ。ところが多くのアンティークジュエリーが美術館や博物館にあって、手にとって実際に観察することが出来ない。ジュエリーの目的は、人が実際に身に付けるものとしてデザインされ、人に装われることが本来の姿である。ジュエリーは、人に着用されてこそ本当の美しさが輝く。ジュエリーは人、衣裳、時、場所、場合の関係が重要である。ヴィクトリア時代、宮廷で、夜会や円舞会などに着用されたアンティークジュエリー。当時はろうそくの明かりの下で着用されたのだ。また着用された衣裳との関係も重要だ。アンティークジュエリーの理解を助けてくれるのは肖像画である。当時ジュエリーがどのように着用されたかを示す絵画や彫刻は、当時のジュエリーについての有様を教えてくれる。
アンティークジュエリーには、その時代ごとに特色のある多彩なデザイン、スタイル、精緻な細工、宝石のカットがある。

「楽しいジュエリーセールス」
著者 早川 武俊

ワールドニュース

今年は異常気象ともいえる暖冬ではありましたが、どのように過ごされましたか。
さて、話題の映画「ブラッド・ダイヤモンド(仮題)」(原題「BloodDiamond」(c)2006 Warner Bros. Entertainment Inc.)の公開がいよいよ近づいてきました。
最初に昨年12月に既に公開されているアメリカでの反応はどうだったのかを報告します。

アメリカではこの映画のおかげでダイヤモンド業界にスポットライトがあたったため、今年のゴールデングローブ賞・アカデミー賞授賞式では「公正な経路と手段で加工された宝石だけを身につける」と公言するハリウッド女優たちが現れたのです。

有名人の言葉に興味を持った人、自分のご贔屓の女優の言葉に賛同する人、そんな人がいたことでしょう。また「芸能人の言っているくだらないこと」と思う人や、映画を通じて社会問題に眼を向けさせるということを傲慢と感じた人もいるでしょう。
きっかけはどうであっても「知る」ということはとても大切なことです。何も知らなければ、何も始まらないのです。人それぞれ違う考えを持つのは当然であり、まずは「知る」ということで、その人の周囲から更にもっと広い社会へ様々な影響を及ぼしていくと思うのです。
女優のコメントは、女優自身のイメージ向上という意味合いが強いことも否めませんが、しかしやはりハリウッド女優が一般に及ぼす影響は大きく、有名人だからこそ出来る社会貢献であると思います。

この映画「ブラッド・ダイヤモンド」が公開され、いわゆる先進国の人たちが置き去りにしているアフリカ問題の中のひとつを広く世に知らしめることとなりました。(内乱、市民戦争、民兵問題、少年兵士、洗脳問題、武器輸出と政府の癒着などそれをサポートしているのが先進国のまたは私企業、そして消費者の欲望であるという構図) 遠く離れたアフリカで起きている、私たちが知らなかった事実なのです。
宝飾業界に身をおいている私たちは、正しく現状を理解していなければなりません

前号でお伝えしましたように、日本での商取引においてブラッド・ダイヤモンドが混在する可能性は殆どなく、我々が扱うものは自信を持ってお客様にお勧めできるものです。その自信を裏付けるためにも、前号をお読みになった方々からの質問に関するQ&Aを付記したいと思います。

<Q&A>
Q1 0.2%のコンフリクトダイヤはどこで出回っている可能性がありますか?(手に入れる方法)
A1 キンバリー・プロセスを遵守していない国では入手可能かもしれませんが、現在日本において流通している可能性はほとんど無く、入手は困難です。正規のルートで日本に輸入されたものをお買い求めください。
Q2 原石が輸出される際の「不正に開封できない容器」とはどのようなものですか。(基準はありますか)
A2 容器に対して基準自体は無く、密封されていればOKです。また政府から封印の発行を受けて密封しているため、「不正に開封できない」というのはその封印のことを指していると思われます。
Q3 キンバリー・プロセス、システム・オブ・ワランティといった対応策は現状どれぐらい浸透しているのですか。
A3 今現在、DTCとサイトホルダーを中心に原石のすべての輸出にはすべての輸入者を確定し、キンバリー・プロセス証明書を発行して、必ずダイヤモンド原石と一緒に動きます。或いは私どもが、海外(イスラエル、ベルギーあるいは、香港)で研磨済ダイヤモンドの買付けを行ない日本に輸入する場合には、売り手が発行するすべてのインボイスに、買い手に対して自主規制として出所を保証するシステム・オブ・ワランティという宣誓文がインボイスに記載してあります。
当社もシステム・オブ・ワランティを遵守し、お買い上げいただきました際には当社発行の納品書にはすべてのダイヤモンドに対して、自主規制として以下の宣誓文をインボイスに記載してあります。
“The diamonds herein invoiced have been purchased from legitimate sources not involved in funding conflict and in compliance with United Nations resolutions. The seller hereby guarantees that these diamonds are conflict flee, based on personal knowledge end / or written guarantees provided by the supplier of these diamonds.”
当社同様にダイヤモンドの輸入業者が現在日本に輸入しているダイヤモンドは、キンバリー・プロセス、そして、システム・オブ・ワランティの遵守という2つの施策により、ほぼ全てのものが紛争ダイヤモンドとは無関係であると言えると思います。
Q4 ブラッド・ダイヤモンドとブラックダイヤモンドは同じなのですか?
A4 いいえ、まったくの別物です。一般的にブラックダイヤモンドはトリート加工や熱処理を施した黒いダイヤです。海外ブランドでも使用されており、日本でも人気があります。
一方「ブラッド・ダイヤモンド」はダイヤモンドの種類ではなく、流通上の状態を表わしております。

その他、わからないことやもっと詳しく知りたいことなどがございましたら、お気軽に弊社までメール:sales@ibctokyo.com にてご連絡ください。
この映画をきっかけに「紛争ダイヤモンド(ブラッド・ダイヤモンド)」に関する知識を深め、お客様が納得できる説明をすることにより、今以上の信頼を勝ち得ることが出来ると思います。

もちろん当社すべての取扱商品に関しましてはキンバリー・プロセス、そして、システム・オブ・ワランティを遵守し、お客様にご満足いただけるような商品を求めて、買い付けしていると自負しております。


アイスブルーダイヤモンド企画・開発プロデューサーが、お客様に本当にあった商品企画をご提案するために設立したダイヤモンド専門会社
株式会社IBCTOKYO 担当:木村/湯浅 e-mail: sales@ibctokyo.com
東京都千代田区麹町 TEL : 03-3556-1481 FAX : 03-3556-1482 
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