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ラボトピックス「水熱合成バイカラーベリル」

水熱合成バイカラーベリル

大阪支店 山根 千恵  

写真1

先日、レッドとグリーンの色相をもつバイカラーの石(写真1)を鑑別する機会がありました。鑑別及び分析の結果、水熱法による合成ベリルであることがわかりました。以下、当該石の鑑別特徴を報告します。

はじめに

1990年代以降、アクワマリン、レッドベリルなどの水熱合成ベリルや水熱合成エメラルドが大量に育成され、市場でも容易に入手できるようになりました。またそれらについての文献も多く発表され、詳細な情報を得ることができます。しかし、今回のような水熱合成バイカラーベリルは非常に珍しく、みることはありませんでした。ロシアでは、実験的に水熱合成エメラルドの種板に水熱合成レッドベリルを成長させ、水熱合成バイカラーベリルを育成させた例はあるものの、商業的には育成されていないようです。

当該石がロシア製かどうかは定かではありませんが、レッドの色相部分は水熱合成レッドベリルでグリーンの色相部分は水熱合成エメラルドです。そして両方の境界部分は明瞭に分かれ張り合わさっているようにもみえますが、実際はそうではなく成長過程で環境を変化させ異なった色相を得ている様子が観察出来ました。

図2

写真2

図2

写真3

図2

写真4

鑑別特徴

当該石は、重量1.713ct、サイズは9.06×6.92×4.15mm、エメラルドカットが施されたルースでした。色調は、合成レッドベリル部分はレッドからオレンジィレッド、合成エメラルド部分はブルーイッシュグリーンでどちらも透明度が高く鮮やかでした。屈折率は、合成レッドベリル部分は1.571-1.578、合成エメラルド部分は1.577-1.584でした。カルサイト二色鏡を用いて多色性を観察したところ、合成レッドベリル部分は中位から強いオレンジィレッド/パープリッシュレッドの二色性、合成エメラルド部分はグリーンブルー/イエローイッシュグリーンの二色性でした。カラーフィルターで検査すると、両方の色に差はなく鮮やかな赤色を示しました。紫外線蛍光反応では、長波短波ともに不活性でした。

顕微鏡による拡大検査では、全体的に山形やV字形の成長模様が顕著に観察されました(写真2)。また合成エメラルド部分には、フェナカイトと思われる結晶が確認されました(写真3)。そのほか全体的にグロースゾーニングや白色微小包有物(写真4)が観察できました。これらは水熱合成ベリルにみられる一般的な包有物でした。

次に、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で天然レッドベリルと合成レッドベリル部分とを分析し比較した結果、天然と合成とでは全く異なる吸収特徴を示しました。天然レッドベリルには特徴的な吸収がほとんどなく、それに対し合成レッドベリル部分は多くの吸収が出現しました。特に5500cm-1~5050cm-1、4200cm-1~3200cm-1の範囲に見られる吸収はH2O(水)で、天然レッドベリルにはみられません(表1)。水をほとんど含まない理由として、通常天然ベリルはペグマタイト中で発見されることが多いですが、天然レッドベリルの産状は特殊で、流紋岩中から発見されるためです。
合成レッドベリルは、水熱法による育成のため水の吸収が多くみられます。一方、合成エメラルド部分は、天然エメラルドのチャートに全体的に近似していますが、詳細にみると天然エメラルドを示唆する2292cm-1は観察されず、逆に、ロシア製水熱合成エメラルドにみられることが多い4375cm-1、4052cm-1吸収が観察されました。またベリルは製造下におけるアルカリイオンの有無が関係し、水分子の方向を変えタイプ I、タイプ II に分けられます。この水熱合成バイカラーベリルは両方ともタイプ I を示唆する5460 cm-1 、5097cm-1とともに、タイプⅡを示唆する5271cm-1の吸収が上記2つの吸収より強く検出されました。従ってこの水熱合成バイカラーベリルはタイプ II と考えられます。

表1

表1

紫外可視分光光度計では(表2)、合成レッドベリル部分のチャートが特徴的でした。
コバルト(450nm付近、525,545,560,570,585nm)、ニッケル(410nm)、鉄(370nm)の吸収が出現しました。合成エメラルド部分ではクロム(680nm)、 鉄(370nm)の吸収がありました。

表2

表2

蛍光X線による元素分析の結果、合成レッドベリル部分には色因となるマンガンの含有が認められ、分光光度計の結果を裏付けるようにコバルト、ニッケルが検出されました。これらコバルトとニッケルの吸収は天然レッドベリルには観察されません。一方、合成エメラルド部分にはクロム、鉄、ニッケルが認められ、天然エメラルドに必ずあるナトリウム、マグネシウムは認められませんでした。

今後、新しいタイプの水熱合成バイカラーベリルとして市場で販売されるようになるかもしれません。

小売店様向け宝石の知識「カメオ」

カメオ・Cameo

宝石に彫刻したり(Carved)、彫り込みをしたり(Engraved)して楽しむことは古くから行われている。その代表的なタイプは、カメオ、インタリオで、その他にシェベイ、クベット、スカラベなどがある。
カメオはガードルから上の表面をカットしてデザイン全体がガードルエッジの上に出るように彫刻した宝石。通常、濃い色の地に像が白く浮き上がっている。本物の宝石材料(縞めのうが主体・トルマリン・トルコ石も使われる)から作ったものをストーン・カメオという。貝殻から作ったものをシェル・カメオ、さんごから作ったものをコーラル・カメオという。ほかにピンクと白のコントラストをもつコンクシェルカメオも珍重されている。
カメオの語源はラテン語の「浮き彫り」からきていて、カメオの歴史は、6,000年前のメソポタミア文明から始まり、最初は王様の玉印(シグネットリング)や封印(シールリング)にインタリオ(沈み彫り)が使われ、カメオは紀元前400~500年ごろ、ほぼ今のかたちになったと云われる。カメオは古代ローマ時代に大流行し、次いでルネッサンスにブームがあり、今日も伝統ある人気の宝石彫刻。写真が無かった時代、恋人や妻や子供のプロフィールを宝石に彫刻してお守りとしブローチやペンダントとして携行することで大流行した。ナポレオンも愛好者だった。一時は女性よりも男性がお守りとして身につけたといわれる。ドイツのイーダーオーバーシュタインは1450年頃からめのう彫刻の中心地となり、ヨーロッパ全土への供給加工地となった。現在では世界のストーン・カメオの90%近くを生産している。
さて昔カメオはどのようにして作られたのか。カメオの宝石材料はめのうが使われるので、硬度7と硬く金属工具では彫るのは困難である。電気のない時代にはライン川の水車の回転力でサファイア(硬度9)の細粒を埋めた砥石を使って細かく彫刻していた。長い時間と労力のいる仕事でした。したがってストーン・カメオの宝石材料であるめのうを浮き彫りするのは大変な作業で、細密で精巧なデザイン仕上げは至難の業でした。表面がなめらかで、精緻なデザイン仕上げ、作家の感性が輝き、より美しい芸術作品に仕上がったストーン・カメオは、まことに貴重な装身具でした。その一部は現在もアンティ―クとして残っていて珍重されている。一方シェル・カメオはイタリアでルネッサンスの時期に流行し、貝殻は内側が赤やオレンジで、表層が白のヘルメット・シェルを用い、大量に作られるようになった。イタリアのナポリが生産加工地として有名。日本でもシェル・カメオがひところ大流行し、カメオと云えば貝殻の装身具と思っている人も多いようだ。
カメオの価値を決める要素は、[1]彫刻家[2]彫刻技術[3]コントラスト[4]大きさ[5]厚さ[6]色合いなどにあり、このうち最も重要視されるのは彫刻家名である。価値あるカメオには必ず作者名が署名されている。絵画と同じである。
宝石や貝殻の表面に浮き彫りした芸術性溢れる「カメオ」は、さまざまなシーンで貴女を美しく演出する。身に付ける通常の宝石装身具とは一味ちがう深い味わいがあります。
愛する人の思い出に、記念に、おしゃれに、芸術作品「カメオ」を身に付けましょう!

「楽しいジュエリーセールス」
著者 早川 武俊

ワールドニュース

イスラエルNews

3月のイスラエルの研磨済みダイヤモンドの輸出量は前年同月期より6.4%増加
3月の研磨済みダイヤモンドの輸出量は、金額ベースで2005年の同月期6億5700万ドルと比べ6.4%増加の6億7200万ドルに達しました。数量(ct)ベースでは38万854ctsと10.0%減少しました。
3月のダイヤモンド原石の輸入も、金額ベースで2005年同月期と比べ31.0%減少し3億3150万ドルでした。数量(ベース)でも120万ctsと33.7%減少しました。しかし逆に研磨済みダイヤモンドの輸入は、金額ベースで3億4980万ドルと3.3%増加しました。数量(ct)ベースでは32万6568ctsと10.5%の減少です。イスラエルのダイヤモンドの原石の輸出は、金額ベースで2億6200万ドルまで3.8%減少し、数量(ct)ベースで220万ctsに8.1%増加しました。2006年第一四半期のイスラエルの研磨済みダイヤモンドの輸出総計は19億ドルで昨年の同期より2.6%のダウンです。逆に輸入は金額ベース9億2100万ドルで2.8%増加しましたが、数量ベースで12.5%ダウンして82万9494cts。アメリカ合衆国、ベルギー、香港およびスイスが主な仕向地で82%に達します。第一四半期のアメリカ合衆国向けは昨年より1.4%減少して10億ドル、同じくベルギー向けも20%ダウンの1億3160万ドル、香港向けも1.4%ダウンの2億6470万ドル、しかしスイス向けは25%アップの2億90万ドルになりました。イスラエルのダイヤモンド原石輸入の1ctあたりの価格は1ctあたり271ドルで4%上昇し、イスラエルの研磨済みダイヤモンドの輸出の1ctあたりの価格は、1765ドル/ctで18%に高騰しました。

M-レポート

-6.5, wh/SI+、demand was on the rise, 1/10-1/6, wh/PQ、demand was on the rise, 1/10-1/6,D-J/VS+,good make、continued selling well, 1/4-1/3, wh/PQ、 were in demand, 3/8-1/2 wh/PQ, including goods for treatment, were in demand, 3/4, D-K/VS+、continued to enjoy strong sales, 1ct-10ct, D-M /SI2+ good makes remained in very heavy demand with noted pressure on prices

アメリカNews

2006年春、クリスティーズのニューヨークオークションは予想をはるかに上回る3900万ドル
春のオークションの季節が到来いたしましたが、4月11日のクリスティーズニューヨーク(Magnificent Jewels Sales)のオークションでは、内覧会の見積り2500万ドルに対し、予想をはるかに上回る3907万1320ドルのセールスを記録しました。336ロットの中でトップ10のロットのうち半分はダイヤモンドで100万ドル以上の金額で販売されました。中でもナンバーワンは、ロットナンバー299番、50.53ctのDカラー、IFのペアーシェイプのダイヤモンドリングが、アジアの個人の方が入札しあまり競争者もなく、およそ5億円(421万6000ドル)で落札されました。1キャラット当たりの価格は約985万円(8万3450ドル)。 ナンバー2は、ロットナンバー336番、50.67ctのDカラー、VVS2のこれもまたペアーシェイプのダイヤモンドが、中東からのディーラーが入札し、およそ3億円(259万2000ドル)で落札されました。1キャラット当たりの価格は約610万円(5万1150ドル)。

M-レポート

-2, across the board、$50-450 was selling strongly, -6.5,WH to TTLB/VVS to PQ was in strong demand,
+6.5, across the board、 continued showing soft demand, 4/4, G-I,$2000-$2500pc non certified stones were selling well, 1.25-1.75cts, D-I/VS1-SI2、were moving well, 2-4cts, across the board、certified
and non-certified stones、was storong demand against short supply

香港News

2006年4月9日、サザビーズホンコン(Magnificent Jewels)のオークションは2802万ドルを達成
春のサザビーズ香港のオークションでは、すべてのロットの68%を販売いたしました。販売のナンバー1ロットは、ロットNO.1363で豪華でめったにない10.04カラットのFancy Vivid Pink Diamond Ringで、オークションではピンクダイヤモンドの世界新記録を打ち立てました。匿名希望者が、およそ7億4000万円、4828万香港ドル(US$6,222,809)で落札しました。1キャラット当たりの価格は約7300万円(5万1150ドル)です。10.15カラットのFancy Pink、VVS1ダイヤモンドを用いたリングが、およそ1億9000万円(1244万香港ドル)で落札されました。22.68カラットのFancy Vivid Yellow Diamond とDiamond Ringがおよそ1億円(US$881,608ドル)、13.86カラットのDカラー、フローレスダイヤモンドペンダントは、およそ1億800万円(US$910,479)

M-レポート

-2, wh SI+、was only slightly shifting, -6.5, wh/SI+ was picking up, +6.5, across the board、was
showing mediocre trading levels, 1/10-1/6, wh/PQ、were staring to sell, 1/4-1/3, wh/PQ、were selling
mainly to Japanese buyers, 1/4-1/3, D-J/VS+,good makes、 demand was on the rise, 3/8-1/2,
D-K/SI1+、
a considerable rise in demand was noted, 1ct-5ct, wh/PQ、were some selling

インドNews

2月のインドの研磨済みダイヤモンドの輸出量は前年同月期より8%ダウン
2月の研磨済みダイヤモンドの輸出量は、金額ベースで昨年の同月期10億4130万ドルと比べ、8%ダウンの9億5800万ドルに達しました。数量(ct)ベースでは300万cts。2月のダイヤモンド原石の輸入は、金額ベースで21%減少して6億5300万ドルでした。同じく研磨済みダイヤモンドの輸入も1億4000万ドルで、前年同期比57%の減少です。数量(ct)ベースでも原石の輸入は26.5%減少し1280万ctsに達しました。逆にダイヤモンドの原石輸出は、4470万ドルで17%増加しました。インドの研磨済みダイヤモンドの輸入は、2005年4月から2006年2月までで金額ベースで81億ドルと17%に増加しました。4月から2月までのダイヤモンド原石の輸入は1億5980ctsに達しました。同期のダイヤモンド原石の輸出は、金額ベースで5億1700万ドルの72%の増加でした。数量(ct)ベースでも2930万ctsと21%の増加です。

M-レポート

-2, wh SI+、was selling though a slight downturn in demand was noted, -6.5, wh、was seeing a slight
drop in sales, +6.5, wh was in continuing good demand, 1/10-1/6, wh/PQ、were in healthy motion,
1/10-1/6, D-J/SI+, good makes、continued selling, 3/8-1/2, D-K/SI1+, good makes、 were selling both
to local and overseas buyers, 1ct-5ct, wh/PQ including goods for treatment、were in strong demand
mainly by overseas buyers


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