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USAレポート

GILC会議

Gemstone Industry and Laboratory Conference(宝飾産業と鑑別機関の会議)が2010年2月1日にアリゾナ州ツーソンで2年ぶりに開催されました。
宝飾業界が国際的に統一した考えを持ち、消費者に対して同じ答えを与えられることを目的にGILCは1992年からこの目的達成のために開かれて来ましたが、近年は活発な議論も少なく、スポンサーも離れたことから、とうとう昨年は開催されずに終わりました。
本年は再びICAが中心となり、これまでの排他的な雰囲気を無くし、誰でも参加できる開かれた会議として、場所もジュエリーショーの出展者が気軽に参加出来るようにAGTAショーが開かれるツーソン・コンベンション・センターに移したため、参加者は100名近くまでに膨れ上がり、大会議室がほぼ満員の状態で会議は朝8時半からスタートしました。
以下は会議の議題です。


議題1:鉛ガラス充填ルビー:呼称についてのディスカッション

ニューヨークの鑑別機関AGLのスミス氏から鉛ガラス含浸ルビーの処理による外観の改変が非常に大きく、ルビーなのか模造石なのかといった呼称の問題および耐久性にも非常に問題があることが提起されました。

議題2:エメラルドの処理の看破と鑑別書についてのアップデート

グベリンラボのキファート女史からエメラルドの含浸に関する処理法及び特徴が説明されました。

議題3:アンデシン:起源、処理、開示に関する論争

全宝協の阿依氏より昨年の宝石学会(日本)で発表した内容に加えてその後の研究により、熱ルミネッセンス分析やICP- MS分析でチベット産天然レッドとモンゴル産の銅拡散処理レッドに違いが発見されたとの発表が行われました。

議題4:トルコ石中のウラニウム鉱物:トルコ石中の異常な黄色斑

GIAのマクルーア氏から中国湖北省(Hubei province)のトルコ石から放射性鉱物が内包物として発見されたとの発表が行われました。

議題5:鉱山から市場に至る色石。倫理的な取引と採掘への取り組

ICA副会長のミシェロブ氏からは、色石の公正取引と倫理的な採掘のための国際的承認システムの概念が提案されました。

議題6:色石の品質基準:宝石取引の機会

タイの鑑別機関GITのワサナクル女史からは、GITで行われているルビー・サファイアの品質分類方法が紹介されました。

以上の議題について個々に討議した結果、GILCのワーキンググループを立ち上げ、そこで対応策をまとめ、来年のGILC会議で発表するということで今回の会議は閉幕しました。


ラボトピックス「シャコ核を使用した有核淡水養殖真珠」

シャコ核を使用した有核淡水養殖真珠

東京支店 横山 照之  

はじめに

先日、東京支店にバロック系の真珠(短径が約9.0~11.0mm)が鑑別のために持ち込まれました(写真1、2)。通常の鑑別手順で淡水産の真珠であることはわかりましたが、珠の形状から核の存在が予想されたため、予備的に軟X線透過検査を行ったところ、全ての真珠に核の存在が確認され、またそれらにはヒビや割れがみられました。通常、淡水真珠の養殖には核を使用せず、ピース(外套幕切片)のみを使い真珠が養殖されるため、珍しいケースと言えます。また養殖核は一般的に淡水産二枚貝を球形に加工したものを使用しますが核にヒビや割れが生じることはほとんど無く、今回のように全ての真珠の核で問題が見受けられるケースは知られていませんでした。そこで「核」に何らかの原因があるのではないかと推測し、破壊検査を含めたさらに踏み込んだ検査を行うため、先述のネックレスに使用されている珠と同等の「両穴の淡水養殖真珠」15個を別途借り受け、調査を行いました。

外観・特徴

形状はタドポールからヘビーバロックの大珠養殖真珠で、淡水養殖真珠を示唆する光沢をもち、オレンジやパープル、白色から薄黄色と多彩な範囲のボディーカラーをもっています。(淡水真珠で大珠を養殖する方法は、生殖巣で有核養殖を行う方法と外套膜で多数個の真珠養殖を行った後、母貝を生かしたまま養殖真珠を抜き取りパールサックに新しく核のみを挿入し養殖をする方法があります。)

写真1 有核淡水連

写真1 有核淡水連

写真2 有核淡水一連(拡大)

写真2 有核淡水一連(拡大)


 

予備検査

軟X線透過検査によると、15個のうち2個は無核でした。残りの有核の珠13個のうち何の問題も見受けられない珠は1個(サンプル (1))のみで、12個(サンプル (2))に「核にヒビや割れ」が認められました。

写真3-1 サンプル(1)

写真3-1 サンプル(1)

写真3-2 サンプル(1)X-Ray

写真3-2 サンプル(1)X-Ray


 

写真4-1 サンプル(2)

写真4-1 サンプル(2)

写真4-2 サンプル(2)X-Ray

写真4-2 サンプル(2)X-Ray


 

検査方法

核を露出させて拡大検査や蛍光X線元素分析を行なうため、表面の真珠層と核を切り離しました。サンプル (1)は核と真珠層をスムースに切り離し出来ましたが、サンプル (2)では核が複数個に割れてしまいました。

拡大検査

サンプル (1)の核は平行な層状構造からなり、真珠層構造を持つ貝殻に見られる”ギラ”と呼ばれる特徴が見られました。
サンプル (2)の核では平行な層状構造と、その構造に対してほぼ垂直方向に細かく成長構造が見られましたが、“ギラ”と呼ばれる特徴は見られず、一部に交差板構造の特徴といわれる” “フレーム(火炎模様)”が見られました。

蛍光X線元素分析

海水産貝殻・真珠と淡水産貝殻・真珠を区別する方法としてカルシウム(Ca)に対してマンガン(Mn)やストロンチウム(Sr)の量比に着目する方法が知られています。淡水産貝殻・真珠には特徴的にMnが存在し、微量のSrを含有しますが、海水産貝殻・真珠ではMnは検出限界以下となり、ある程度のSrを含有します。当該サンプルを分析した結果、サンプル (1)は「淡水産貝」を加工した核が使用されている事が確認できました。また、サンプル (2)では「海水産貝」を加工した核が使用されており、さらに外観的特長からシャコ貝と考えられます。

最後に

今回の検査の結果、軟X線透過検査において「核にヒビや割れ」が起きているこれら類似性のある真珠の核にはシャコ貝が使用されていると考えられます。
これまでは核の素材について問われることはありませんでしたが、シャコ貝核にはじまり鉱物のドロマイトやパラフィンなど、多種多様の物質が養殖真珠の核として使用されている事に対して、(社)日本真珠振興会は2009年度版 真珠スタンダード I-2-1-1有核養殖真珠の項目で「ピグトウ、ウオッシュボード、メープルリーフ、スリーリッジ、エボニーシェル等米国産の淡水産二枚貝の貝殻真珠層を切断、研磨等の物理的加工により球形に成型した真珠核及び外套膜小片(ピース)を人為的に生きた真珠貝の体内に挿入することにより、核の周囲に真珠袋(パールサック)が形成され、その袋内で核表面に真珠層が形成されたもので、外観し得るその表面全体が真珠層で覆われているもの。」と養殖真珠の核の素材について言及し、定めました。今後私たち鑑別機関は表面から見る事が出来ない核についても検査および何らかのコメントを求められる時期が来るかもしれません。私たちはその時期に備えなければならないと考えます。

第10回日本琥珀研究会報告

東京支店 藤田 直也  

今回で10回目を迎えた日本琥珀研究会が、2009年の11月28日、29日に開催されました。日本琥珀研究会は日本中の琥珀研究家、琥珀愛好家が一同に集まる研究会です。会員数は75名を数え、一年に一度研究会を開催しており、昨年度は20人の会員と2人の非会員が集まりました。

北九州市立自然史・歴史博物館

北九州市立自然史・歴史博物館

研究会会場 壇上は寺村会長

研究会会場 壇上は寺村会長

11月28日に開かれた総会では、寺村光晴会長の挨拶の後、各役員から決算、事業計画などが報告されました。今回は第10回ということもあり、琥珀研究会にとって重要な節目です。琥珀研究会という名称についての意見や、会誌のあり方、その記事の内容についても討論されました。会誌の記事の内容については、日本各地の琥珀や歴史的に意義のある琥珀を分析し、会誌に載せてみてはどうかという提案や、その試料の選定には特別に委員会を設けてはどうかという提案が上げられました。また、この大会にあわせて10周年記念会誌「こはく」が発行されましたが、この会誌には歴代会長の記事や、中條利一郎氏(帝京科学大学 理工学部 教授)、植田直見氏(財団法人元興寺文化財研究所)による化学分析などが掲載されており、非常に興味深い内容になっています。
同日に開催された研究発表会では4件の発表が行われましたので、以下に報告します。



熱分解-ガスクロマト/質量分析による琥珀の分析

発表者:(財)元興寺文化財研究所  植田 直見
住友金属テクノロジー(株) 渡邊 緩子

Py-GC/MS装置

Py-GC/MS装置

非常に困難である琥珀の産地同定を熱分解-ガスクロマト/質量分析(Py-GC/MS)を用いて分析する方法が紹介されました。この方法では試料を低分子、次に高分子の化合物へと二段階に分けて揮発させ分析を行うため、劣化した琥珀の分析への活用が期待でき、実際に分析した例でも産地による差異を示していました。今後産地のサンプルデータを増やしていくことで、劣化した琥珀の産地の同定もますます可能になるのではないかと思われます。


久慈琥珀の虫入り再発見の経過

発表者:川上 雄司

文献では19世紀初頭にアブの入った琥珀が久慈から見つかったという報告がありましたが実物は現存しておらず、久慈で実際に虫入り琥珀が見つかったのは1984年でした。この琥珀は中生代白亜紀後期のもので、この時代の虫入り琥珀の発見はわが国ではこれが初めてであり、世界的に見ても珍しいもので、この発見に至るまでの経緯が写真、地質図などを用いて説明されました。

古墳時代後期の琥珀製棗玉について

発表者:明治大学校地内遺跡調査団 斉藤 あや

琥珀製棗玉

琥珀製棗玉

古墳から出土する琥珀のうち、特に棗玉について年代、サイズ、地域分布などについて調査した詳細な結果が発表されました。年代別の出土数は古墳時代前期と中期前半では少なく、中期後半から後II期にかけて増加し、後IV期に最盛期を迎え、そこから再び減少する傾向があり、サイズに関しては前期には小さいものが多く、後IV期に最も大きくなる傾向があるようです。また地域に関しては、はじめは西日本のほうが多かったものが、後IV期になると千葉での出土数が非常に増えており、これは千葉で多く琥珀が採れるようになったことと関係があるようです。


新発見の久慈産虫入り琥珀

発表者:久慈琥珀博物館館長 佐々木 和久

クジアケボノアリ

クジアケボノアリ

クンノコアリ

クンノコアリ


久慈で最近新しく発見された新種のアリ2種類と、恐竜の化石、ワニの化石についての発表がありました。
今回発見されたひとつ目のアリは「クジアケボノアリ」と名づけられ久慈産の琥珀から見つかったもので、いわき市などで発見されたアケボノアリの新種であることが判ったそうです。二つ目のアリは「クンノコアリ」と名づけられたブルブラアリの仲間の新種で、国内でアリの化石が発見されたのは福島県のいわき市についで2箇所目です。ちなみにクンノコというのは久慈地方の方言で、琥珀のことを意味するそうです。

ワニの歯の化石

ワニの歯の化石

恐竜の化石は、久慈琥珀博物館の琥珀採掘体験場の地層から2008年にみつかりました。白亜紀後期の恐竜の化石は珍しく、骨の太さから体長は2メートル程度ではないかと推定しています。周飾頭類の化石の可能性があり確認されれば国内で初の発見になりますが、標本が足りないため断定するにはいたっていません。

今回発見されたワニの歯の化石は球状の奥歯で、恐竜の化石同様、琥珀採掘体験場の地層から発見されました。恐竜の化石やワニの化石が見つかったことで、今後その他の化石が発見される期待が高まっているようです。


ラボトピックス2「茶褐色のバーンマークを持ったダイヤモンド」「茶褐色の珍しい内包物を持ったダイヤモンド」

東京支店 戸田 長利  

茶褐色のバーンマークを持ったダイヤモンド

昨年の暮れにブラウン味を帯びたラウンドブリリアントカットのダイヤモンド(1.03カラット)が弊社東京支店にグレーディング(ソーティング)のため持ち込まれました。お預かりしたダイヤモンドは全て正確なグレーディングを実施するため、検査に入る前には念入りに洗浄が行われますが、洗浄後このダイヤモンドからブラウン味は除去されませんでした。

顕微鏡による拡大検査をしたところ、ブラウン味はダイヤモンドそのものの色ではなく、茶褐色斑がガードル近くのクラウン部表面に広く分布しているが原因であり、またスリガラス状のガードル表面に地金の跡があったことから、指輪などの宝飾品から外した石であることも判明しました。また、このダイヤモンドのテーブルにはSPマーク* が入れられており、それによるとHカラーの表示がありました。
このような事実から、われわれは茶褐色斑で汚される前のダイヤモンドはHカラー相当だったものが、加工の際のバーナーの高熱によって表面が焼かれてバーンマーク(火傷状態)を生み、しかも何らかの汚染物質も焼き付けたために褐色斑状模様を生んだのではないかと判断しました。

通常の白く濁ったようなバーンマークであれば、カラーにはほとんど影響を与えず、バーンマークの存在はフィニッシュ項目の研磨状態で評価が行われます。しかし、今回のようにバーンマークが茶褐色に染められている場合はカラーの評価を不可能にするため、グレーディングの依頼をキャンセルさせていただくことになります。バーンマークはダイヤモンドクロスや超音波洗浄器では取ることが出来ませんが、再研磨で表面を磨き直し、本来の石の地色が検査できる状態にして再度お持ち込みいただければグレーディングは可能になります。

※ SPマークとは・・・真空蒸着(スパッタリング法)によりダイヤモンドのテーブル面上に肉眼で認識できない程度に極微小の蒸着金属層(モリブデン層)を成形させ、偽造防止、品質証明のためダイヤモンドのグレード結果を表示させたもの。

茶褐色の珍しい内包物を持ったダイヤモンド

このダイヤモンドも東京支店にグレーディング(ソーティング)のために預けられた1.19カラットのラウンドブリリアントカットのダイヤモンドで、肉眼でも茶褐色の内包物が見えるような石でした。顕微鏡による拡大検査では、ダイヤモンド表面から内部にかけて箒状に広がる茶褐色の内包物の集合が数箇所に偏在していました。

この箒状の内包物の集合を顕微鏡で拡大して観察すると、一本一本は中空の角張った柱状の孔が密集しているもので、表面に近いほど褐色味が濃いことが判りました。これらは、ダイヤモンドの結晶が成長する過程で発生した転位* がマグマの融食作用によって束状のエッチピット(融食孔)を生み、また周囲に存在した放射性鉱物や液体の影響で結晶面だけでなく孔の内側までも着色され、研磨されない孔の内側だけに茶褐色味が残ったものと考えられます。

このようなダイヤモンドには自然界の神秘を深く感じさせられ、グレーディングの現場に携わる我々にとって感動の瞬間でもあります。しかし、多数の茶褐色の内包物はダイヤモンドのカラーの評価に大きく影響を与え、正確なグレーディングを困難にするため、残念ながらグレーディング依頼をキャンセルさせて頂きました。但し、石の色が天然の色か処理によるものかを判断することは可能なため鑑別書の依頼は受けられます。また、グレードの善し悪しではなくダイヤモンドの内包物の魅力をエンドユーザーに伝えるため、数十倍から数百倍に拡大した包有物の写真を添付した報告書『宝石の内部世界』もこのようなダイヤモンドを販売する際に利用して頂けたらと考えております。

※ 転位とは・・・結晶中の原子は規則的な配列構造(結晶格子)を取っていますが、実際の結晶では原子の並び方に多数の“乱れ”が存在しています(格子欠陥)。その“乱れ”には幾つかの種類が存在しますが、転位とは格子配列中に形成された線状の“乱れ”を指します。
箒状に広がる茶褐色の内包物を有したダイヤモンド

箒状に広がる茶褐色の内包物を有したダイヤモンド

拡大写真(30倍)

拡大写真(30倍)


 

小売店様向け宝石の知識「金価格・Gold Price1」

金価格・Gold Price1

金の用途は宝飾品51%、工業用12%、投資用17%、公的投資18%〈2008年推計〉。宝飾品の材料としての金の市場価格が乱高下すると、宝飾業者のリスクは大きい。昨年秋いらい金価格は乱高下しながら上昇している。金高騰は経済不安を映すバロメーターといわれる。

☆金価格が上昇する要因は、
[1]ドル安と米国の財政不安
[2]投資需要の増加
[3]中国など新興国中央銀行の買い
[4]金融不安
[5]軍事的緊張やテロなどのリスク
などがある。

金やプラチナの市場価格は、30年前まではロンドン現物価格で世界市場価格が決っていた。その後は米国NY市場が世界の指標価格となっている。

1980年初頭にNY金価格はドル/トロイオンスが600ドルになり、日本国内では円/グラムが6700円に高騰したことがある。この時はソ連がアフガンに侵攻し世界情勢の不安が増したときである。その後金価格は暴落しNY金価格は300ドル/トロイオンスまで下落した。世界景気がもちなおしたためだ。日本国内の景気も盛り返し、国内金価格は、00年11月には979円/グラムまで下落した。

★金価格が下落する要因は、
[1]世界景気回復と中央銀行の利上げ
[2]とくに米国景気の好転
[3]ドル高
[4]金を購入するより株やそのほか有利な投資
[5]ヘッジファンドなどの大量売却
などがある。

金地金の国内価格は、ひところの1000円/グラムから今や3倍の3000円/グラムを超えている。ドルベースでは300ドル/トロイオンスが4倍の1200ドル/トロイオンスに高騰している。ドル安の中で金に投資する傾向が強まり、さらに株安で株と連動の薄い金に注目され、世界的に金・ゴールド買いに向かっている。

しかし近年、金・ゴールド及びプラチナを含めて商品相場は乱高下しており注意が必要だ。

株価が低迷している今、株式市場と連動性が薄い金投資に注目する人が多い。

われわれ宝飾業界は、原材料の金の価格が上昇すると宝飾品価格が連動して値上がりし、宝飾品需要の減少をまねく。

いま市場では金を宝飾品から回収するリサイクル・ビジネスが増加し、過去にない現象が起こっている。宝飾品メーカーにとって、ゴールドジュエリーは材料としての金価格が大きく変動するのは大きな経営課題だ。金価格が値上がりしているときは値上がり差益が得られるが、値下がりすると在庫評価損が発生し、経営に大きな影響を及ぼす。プラチナもつい最近まで高騰したが、その後急落した。そのため国内の宝飾業者は大きな痛手を蒙った。金もいまは高騰しているが将来何時に急落するか知れない。

宝飾品ゴールドジュエリーは、元来あくまで製品の細工、出来栄え、デザイン、感性、流行などが重要で、材料としての金価格に主体するものではない。

宝飾業者はゴールドジュエリーの過剰在庫を避け、常時、適正在庫の維持に心掛けるべきである。金やプラチナの投機的購入は厳に慎むべきだろう。

NYの金価格は、ドル/トロイオンス価格で決まる。したがって、日本国内価格は、円/グラムに換算される。為替相場が影響する。なお、トロイオンスは31.103g。国際地金取引単位。中世に繁栄した都市トロイに由来する。金は実物で無価値にならない利点があり、一方で金利・配当がつかない。したがって通貨が金利を上げると金のメリットは低下する。1グラムでも1トンでも単価は同じなので宝飾品大量生産のメリットは大きくない。

「楽しいジュエリーセールス」 著者:早川 武俊
早川宝石研究所ホームページ